櫻イミト

最後の脱出の櫻イミトのレビュー・感想・評価

最後の脱出(1970年製作の映画)
3.5
「ゾンビ」(1978)「マッドマックス」(1979)に大きな影響を与えたディストピア映画の先駆作。監督は「裸のジャングル」(1966)のコーネル・ワイルド。

環境汚染によりイネ科植物の病害が一気に広まり世界中で食糧危機が起こる。元軍人で建築家のジョン・カスタンスと家族はロンドンから脱出して田舎の兄の農場を目指す。しかし、エゴと暴力性がむき出しの弱肉強食社会に彼らものみこまれ。。。

プロローグに羅列される環境汚染のニュースフィルムに「ゴジラ対ヘドラ」(1971)や「ノストラダムスの大予言」(1974)を連想する。1970年時点から警鐘は鳴らされていたことを再認識。

前半から主人公が生き残りの為に罪なき人々に引き金を引く。ハードでモラルの無い展開は、最近の甘っちょろいディストピアものよりも社会派的だ。映画とは本来このような表現が許されるものだったはず。

何度も挿入されるフラッシュ・フォワードが意外に新鮮。現実を生きる我々も、実は脳内フラッシュ・フォワードで最悪の未来の光景を観てきたのではないか?

おそらく本作のような社会派ディストピア映画の警鐘は無駄ではなく、鑑賞した我々の意識に蓄積され暴走のブレーキになっていると思われる。現在は鑑賞しにくい本作だが、低予算ながらも気合の入った良作なので、ぜひ配信や再販を希望したい。
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