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大列車作戦のtakのレビュー・感想・評価

大列車作戦(1964年製作の映画)
4.5
邦題で敬遠していた。「バルジ大作戦」や「特攻大作戦」みたいな男臭い軍人が活躍する映画だと思っていたからだ。

連合軍が迫り解放目前のパリから名画の数々がドイツに持ち去られようとしていた。プレタイトルで一人のドイツ将校がその絵画に執着しているのが示され、絵画を荷造りする様子、木箱に記される有名画家の名前が映される。絵を持ち去られないように列車を遅延させられないか、絵を守ることはできないかと訴えられた主人公とレジスタンス活動をする仲間たち。フランスの人々の命を守るために戦ってきて、多くの犠牲者を出してきた。絵のために命をかけられるか。主人公ラビッシュの本音はそこにある。しかし芸術品である名画の数々はフランスの誇りだからと言う仲間と共に危険を冒すことになる。

戦争の虚しさや人を狂気に陥らせる怖さを多くの映画で味わってきた。この映画で描かれる戦いは、決して無益なものではないだろう。しかしその為に払われる犠牲の大きさを前にして、僕らは言葉を失う。しかも列車に積まれた絵画の価値を知るドイツ将校に対して、立ち向かうフランスの人々はその絵の価値は知る由もなく、見たことすらない。自分たちが守ろうとしているものは、本当に命を賭けるべきものなのか。主人公ラビッシュは葛藤を抱えながら、計画を実行するのだ。その矛盾を突きつけられるクライマックス。失われた命の為に主人公は引き金を引く。無言のラストシーンが強烈に胸に迫る、すげえ映画だ。

列車が衝突シーンもトリックなしの本物で撮影されているから迫力が違う。埃や土砂が舞い上がって被写体を遮りそうだが、これだけの映像を収めることができたのは監督初めスタッフの執念。ドイツ軍を欺く鉄道職員の連携プレイはハラハラするが、見ていて痛快。しかしエンターテイメントに徹してはおらず、次々と犠牲が増えていく様子は、戦争の醜さを真正面から捉えている。

何のために戦うのか。執念の物語。
「英雄ぶって死ぬだけの男はバカだ」
ジャンヌ・モローの言葉が心に残る。フランケンハイマー監督はとにかくハードな男のドラマというイメージ。「大列車作戦」は、そこに反戦の強いメッセージが添えられた名作だ。
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