ちろる

ナイロビの蜂のちろるのレビュー・感想・評価

ナイロビの蜂(2005年製作の映画)
4.2
「シティオブゴッド」のフェルナンド・メイレレス監督が綴る、とある外交官夫婦の壮絶な叙情詩。
ナイロビに赴任することになった主人公ジャスティンは弁護士で事前活動家でもある妻が外出先で何者かに殺されたことを知らされる。
愛する美しい妻テッサ。
彼女は一体何を抱えていたのだろうか?

深入りすればするほど残虐な、搾取され続けるアフリカの実態を知る。
「表向きは君たちを助けるため」だとワクチン接種をしながら製薬会社の行為は倫理の枠を大きく超えた恐ろしいものであり、それを見知ってしまったテッサは黙っていることなどできるはずもない。
自分以外の男性と共にホテルを共にして殺された妻。
死後見つかった秘密の手紙。
愛してやまない妻に知りなくない別の顔があったのかと疑う気持ちをこじあけて、辛い道のりとなる妻の軌跡を辿ろうと突き動かしたのは、ジャスティンの妻を信じたいという愛のおかげだったのだろう。

妻の秘密を探るうちに、目を背けたくなるような世界の醜さを知るが、同時に愛しい妻への愛は膨れ上がる。
どうしようもないこびりついた汚れは根っこから取り除けないとしても純粋な情熱は、こうして伝染して人を突き動かすこともあるのだろう。

ラストはやるせなく残酷であっても私はこれをハッピーエンドだと思いたい。
さまざまな表情を見せるレイチェル・ワイズの重厚感のある演技はこの作品をより奥深いものにしてくれた。
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