AkikoNakayama

ナイロビの蜂のAkikoNakayamaのネタバレレビュー・内容・結末

ナイロビの蜂(2005年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

英国人の外交官が非業の死を遂げた妻の真相を追う、手に汗握るサスペンス。特筆すべきは映画中に散りばめられた「対」の構造だ。
奪われるアフリカの民衆と、奪う先進国の陰謀。相容れぬ夫と妻。混沌と喧騒に満ちたアフリカの風景と、静寂に包まれた英国。生の幸福と、死の絶望。
緊張感を演出するコントラストは、主人公が真相を追い始めたシーンを皮切りに渾然一体になっていく。
アフリカの賊は略奪と惨殺に手を染め、妻を死に追いやった先進国の男たちは主人公を助けながら「そんなつもりはなかった」と口々に告げる。主人公は妻と同じ台詞で命の重みを叫び、ついに彼女の真意を知る。そして、英国の公館は告発された不正にどよめき、主人公はアフリカの静けさの中で妻の幻影を傍らに安堵とともに生を終える。コントラストをあえて崩壊させ、転がるように展開するストーリーの緩急を描いた緻密すぎるサスペンスだ。
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