おーたむ

トラフィックのおーたむのレビュー・感想・評価

トラフィック(2000年製作の映画)
4.4
なかなか手を出しにくい作品でしたが、なんかそんな気になって鑑賞。
もちろん社会派の評に違わぬ作品でしたが、それだけではない作品でした。

麻薬戦争って言葉は知らないで見始めましたが、特に問題なく没頭できました。
群像劇で描かれているため、使う者、売る者、取り締まる者、裁く者など、様々な側面から麻薬問題を見ることができて、大まかな全体像の把握がしやすかったんだと思います。
また、それぞれの家族や友情を崩壊させていく様子が、麻薬の恐ろしさや、その影響の大きさと真反対の身近さを感じさせて、作品に寄り添わさせてくれます。
取っつきにくいはずのテーマに共感させる力が、本作にはあったと思います。

相棒を殺されたり、捜査が徒労に終わったり、真摯さが人に報いてくれるわけではないと感じさせる部分もあります。
一方で、麻薬との共存を選んだ家族のところには逃げきることを許さない追跡者が現れ、麻薬と戦うことを選んだ家族は後の救済を予感させる…という終わり方には、世の中にある正義についても思い起こさせられます。
安直な娯楽に陥ることなく、それでいて社会問題についての単なる疑似ドキュメンタリーにはとどまっていない、見る人に複雑な余韻を残してくれる見ごたえのある作品だと思います。
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