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地下鉄のザジのpikaのレビュー・感想・評価

地下鉄のザジ(1960年製作の映画)
4.0
現代だと映画やPVなどで使い尽くされたように見えるアイディアやテンションだが、今作が元ネタなのだろうか、そこらへんはよくわからないけれども、この時代での映像的な味わいや凄さが滲み出ているし、そんな映画史的な立ち位置での斬新さを抜きにしてもセンスが良過ぎる。

カメラワークや画面の構図、配色や音楽のタイミング、ジャンプカットや早回しにスローなど、軽快なギャグも嫌味がなくシュールでコミカルでとにかく最高!
コロコロと不思議に展開していく様も瞬間的に楽しめる様も隅々完璧な面白さだし、ラストでしっちゃかめっちゃかになる怒涛のシークエンスで全てが揉みくちゃになり映画を超えてしまう瞬間は拍手喝采!

シュールなドタバタコメディと言うが、ギャグ漫画というかサイケなアニメを実写化したような奇想天外なめくるめく極上の映像体験で、フィルムの質感がたまらなく魅力的な1960年に作られたという奇跡のような完成度。
こういうのはツボど真ん中なので延々とご褒美のような幸せな時間だった。

「死刑台のエレベーター」「恋人たち」から今作を作ったルイ・マルの振り幅に面食らったのも痛快だし、劇中にて「芸術家はひとつのことを突き詰めるものだ、俺は色んなことをしてしまうからイカン」みたいな台詞を吐かせて自虐風なドヤ顔をしつつも、どの作品も傑作なのでぐうの音も出なくなる感じがニヒルでたまらん!笑
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