みゅうちょび

歓びの毒牙(きば)のみゅうちょびのレビュー・感想・評価

歓びの毒牙(きば)(1969年製作の映画)
3.6
これが監督デビュー作とは思えない。
やはり世に名を残す映画作家はデビュー作からして違う。
面白いです。もちろん、今観たらかなりなクラッシック感満載ですが、カメラと言い、ディテールと言い、デビュー作で既に観客を楽しませる手法を心得ているというのが凄いなと思います。

冒頭の、ガラス張りの画廊での、ガラスの二重扉を使ったスタイリッシュでスリリングな演出。主人公は、通りがかりに画廊の中2階上でナイフを手に揉み合う男女を目撃しその様子を見極めようとするが、ウィンドウからは顔部分が切れた状態でしか見えず、遂に腹部を刺され助けを求めて階段を降りてくる美女をなんとか助けようとガラスのウィンドウから中に入ろうとするも、2重のドアに閉じ込められてしまう。倒れる美女を目前にして、中にも入れず、外にも出れず、何も出来ないというもどかしさ。

連続殺人が起っている中での事件の目撃者として、アメリカに帰国を控えていながら警察から執拗に尋問を受け足止めを食らう主人公は、自分が目撃した現場と自分の記憶に何か釈然としないものを感じている。作家でもある彼は、警察に協力し事件の犯人探しに乗り出すという、この手の映画ファンには、あるある〜と言う内容ですが、多分当時にしたら物凄く刺激的で斬新だったろうなと思います。
スージー・ケンドールはやっぱ可愛いですし、彼女だけでなく、女性が皆、美人ぞろい。色々オサレで、犯人はいったい誰なのか??という謎解きを楽しくする登場人物達のバリエーションも豊かです。

音楽をエンニオ・モリコーネがやっているというのも、プロデューサーの父を持つアルジェントが、やはり普通の新人監督ではなかったのだなと思わせます。本作も父親がプロデュースしています。

父親の後押しがあるとしても、初監督作にして、独自のイタリアンジャーロを確立した才能豊かなアルジェントの傑作と言っても良い作品だと思います。
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