アニマル泉

上海から来た女のアニマル泉のレビュー・感想・評価

上海から来た女(1947年製作の映画)
5.0
ウェルズのテーマは「罠」「騙す」だ。本作もエルザ(リタ・ヘイワース)バニスター(エヴェレット・スローン)ジョージ(グレン・アンダース)ブルーム(デッド・デ・コルシア)は全員が何か犯罪を犯しそうで怪しい、マイケル(オーソン・ウェルズ)は何か利用されそうである。相手は誰か?何が起きるのか?それが物凄いスピードで展開される。本作は40万ドルの大赤字、アカプルコ洋上ロケはスタッフの死亡や赤痢、撮影所のストライキなど困難を極めてコロンビア映画の製作主任のハリー・コーンはファイナル・カットを取り上げて155分の作品を86分にカットしたという。興行成績も振るわず、ウェルズは本作以降はハリウッドのメジャー作品は撮れなくなった呪われた作品である。
ウェルズの主題は「破壊」「砕ける」「鏡」だ。本作ではそれらが見事に昇華する。ウェルズの世界では男たちはすぐ殴る。殴り合いは過剰にメチャクチャになる。ガラスや鏡は必ず砕ける、ビンや陶器で頭を殴って粉々になる、トラックと衝突する場面は砕けるフロントガラスが挿入される。そして名高いラストのミラールームの銃撃戦だ。無限に像が映る鏡地獄、銃撃で鏡地獄が激しく砕け散る、誰がどうなったのかわからない、破壊に次ぐ破壊。ウェルズの容赦ない過剰さは圧巻である。
「過剰さ」でいえば海辺のパーティーもやたら大げさだ。
ウェルズはアップだ。アップが力強い。本作では横たわるリタ・ヘイワースを逆さま斜めから撮るアップが官能的だ。
ウェルズが舞台にするのは辺境や怪しげな所が多い。本作も水族館、遊園地、劇場、中華街、とディープな場所だらけだ。
後半は法廷劇になる。
煙草と銃、シルエットがウェルズらしい。
ナレーション、ウェルズの「声」も重要だ。
コロンビア映画。
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