こたつむり

サインのこたつむりのレビュー・感想・評価

サイン(2002年製作の映画)
2.8
“錬金術師”シャマラン監督によるホムンクルス。

なるほど。
巷での評価が低いことに納得がいきました。
本作は喩えるならば“いがグリ”。
“いが”の向こう側にある黄金色に輝く実を期待させる作品なのです。

だから、その実が食べられることを心待ちにして。
僕は一本一本とゆっくり“いが”を取る様を見守りました。勿論「足で割れば簡単なのに」とツッコみたかったのですが「待ち時間が長いほどラーメンが美味しく感じる法則」を思い出し、気長に待つことにしました。

そして“いが”を取り終わって。
「あとは殻を剥いて茹でて食べるだけ」と思った瞬間。耳にしたのは「さあ。召し上がれ」という言葉。いやいやいやいや。そこまで来たら、殻も剥いてくださいよ。そして、茹でてくださいよ。噛めばじんわりと口に広がる甘さを実感させてくださいよ。あー。

…なんて思いに囚われてしまったのです。
やはり、どんなに美味しいクリだとしても。
殻を剥かなければ食べられませんからね。ちらりちらりと“いが”の向こう側に見えていた殻が完成状態だったなんて…予想していませんでした。

だけど“美食家”海原雄山は言うのでしょう。
至高の料理とは“おもてなしの心”が必要である、と。つまり、大切なのは結果ではなく過程。米を炊く前に一粒一粒と選別するように、殻を痛めないように“いが”を一本一本抜いたのは最良の“おもてなし”。そして、自らが殻を剥く苦労を知ってこそ、その先に“美味”が待っているのだ、と。

そして、そのまま口にして甘みを楽しむもよし。
ご飯に入れてクリご飯とするもよし。
色々な楽しみ方があるのです。少なくとも「あれだけ期待させておいて、中に入っているのは普通のクリか!」なんて理不尽な怒りは禁物。クリの中にあるのはクリ。当たり前の話です。

まあ、そんなわけで。
映画の感想というよりも、クリの感想のようになってしまった気がしますが…ネタバレしないように喩えて書いていたら…どんどんと本質から遠ざかってしまったのでしょう。スミマセン。良くあることです。天津甘栗おいしい。

何はともあれ。
肩透かしされたのも事実ですが、それなりに楽しめた作品でした。期待せずに鑑賞すれば悪くはないと思います。それに子役の二人が頑張っていましたよ。特に妹さんのほうは雰囲気抜群。鑑賞後に知りましたが『リトル・ミス・サンシャイン』の娘なのですね。はあ。小さい頃から輝いていたのですなあ。
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