暗闇に浮かび上がる四人の男。天を仰ぐ祈りにも似たそのショット。クイーンのセカンドアルバム「QUEENⅡ」のジャケットです。このジャケットは『上海特急』の有名な写真を真似たものなんだそうな。映画『ボヘミアン・ラプソディ』にもこのポスターがチラリと出てきてましたね。そう、マレーネ・ディートリヒです。
マレーネ・ディートリヒの相方役の人、クライヴ・ブルックはあんまり馴染みがないですね。もともと英国の俳優でしたが後に渡米、サイレント後期にスターだった方なんだそうです。
主要キャラの一人は見覚えがありました。この太い眉毛、渋い声、このおじさんは間違いない、ユージーン・ポレットだ。『天国は待ってくれる』『スワンプ・ウォーター』『襤褸と宝石』にも出てましたね。この濃い顔、濃いキャラクターは忘れようにも忘れられない。
ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督とマレーネ・ディートリヒのコンビがお届けする『嘆きの天使』『モロッコ』『間諜X27』に次ぐ4本目の作品。それが『上海特急』
悪名高き上海リリー。「まともな人は退屈」と言い切るマレーネ・ディートリヒ。しかし彼女は悪女が実によく似合う。
首から頭にかけて、顔の右半分くらいにつけてるのは大きい鳥の羽根かな?すごいなあ。こんな衣装を着こなせるのはマレーネ・ディートリヒかフレディ・マーキュリーぐらいしかいない。
暫くするとお色直しして登場します
次の衣装は、とにかくファーがすごい。なんだろうこれ。キツネ?いやヒグマかな?これほどまでに太いファーは見たことない。こんな衣装を着こなせるのはマレーネ・ディートリッヒとフレディぐらいだ。
上海特急に乗り合わせた運命の恋人
男「君を失うなんてどうかしてた」
とうの昔に消えてしまった愛の炎は5年間も燻り続けていたのでしょうか!?
そこからのキス
この体勢で?
この絵面、ファーの存在感がとにかくすごい
なかなかのキスシーンですね
死んでしまった過去。色褪せてしまったはずの愛は、この先どうなってしまうのか。この再会が意味するものとは…
ここで物語はメロドラマからサスペンスに変わります。時代は1930年代。政府に反旗を翻す革命軍が蠢く不穏な中国。この上海特急にも不気味な陰が差しむのです…
展開が読めない。改革軍が目茶苦茶する。ここら辺、なんとなく『モロッコ』っぽいです。
口先だけの愛など要らない
すれ違う男と女
すれ違う心
女の意地
ああ、なんということでしょう
ここに来てこのキャラが愛の鍵を握るとは…
なかなかに面白い
最後のお色直しは、むき出しの肩を隠した黒のドレスです(モノクロだから分からないけどたぶん黒)。そして今度のファーはかなり控えめ。シックに着こなすマレーネ・ディートリヒ。かっこいい。
この愛を諦めきれない、愛を失いたくないという想いが画面から伝わってくるのです。素直になれない二人がもどかしい。う~ん。
そこからのあの場面です。暗闇の中、頭上から差しこむ光を仰ぎ見るマレーネ・ディートリヒ
これは…
祈りなのか?
それとも涙?
なんか色んな感情がぎゅうっと詰めこまれている。このシーンを観ることができたので私はもう満足です。ラストは実にジョセフ・フォン・スタンバーグらしかったです。