ぶみ

クリムゾン・リバーのぶみのレビュー・感想・評価

クリムゾン・リバー(2000年製作の映画)
3.5
深紅の衝撃。

ジャン=クリストフ・グランジェが上梓した『Les Rivières pourpres』を、マチュー・カソヴィッツ監督、ジャン・レノ、ヴァンサン・カッセル主演により映像化したフランス製作のサスペンス。
同時期に起きた二つの事件を追う刑事の姿を描く。
主人公となるベテラン刑事・ニーマンスをレノ、若手刑事・マックスをカッセルが演じているほか、事件に絡む大学生をナディア・ファレス、事件で死亡した少女の母親をドミニク・サンダが演じているほか、眼科医役をカッセルの父親であるジャン=ピエール・カッセルが演じているのも見逃せないところ。
物語は、フランスのアルプス山脈の麓にあるゲルノン大学で起きた猟奇殺人事件を捜査するニーマンスと、ゲルノンの近くにあるサルザックで起きた墓荒らしと小学校での窃盗事件を捜査するマックスという、一見関係ないそれぞれの事件を捜査する二人を中心に展開していくが、ニーマンスはパリ市警から派遣された一匹狼のベテラン刑事、かたやマックスは素行不良の若手刑事という対照的な二人が、事件の共通点が見つかるにつれ行動をともにすることとなるため、バディものとしても楽しめるものとなっている。
何より、フランスでありながら、アルプスの麓の町を舞台としているため、そびえたつ雪山が随所に登場し、かつ空撮を駆使した映像もあることから、寒々とした北欧ミステリのような雰囲気が漂っており、二つの事件が徐々に近づき真相に近づいていく様は、まさにサスペンスの王道と言えるものであるとともに、サスペンスオンリーではなく、アクションや山道でのカーチェイスも挿入されるため、終始飽きさせない仕上がりとなっている。
また、クルマ好きの視点からすると、前述のカーチェイスもさることながら、途中事件の鍵を握るクルマが、ロシアの自動車メーカーであるアフトヴァースが長年に亘って製造していて、日本でも一定の人気があるラーダ・ニーヴァ(作中では「ラダ」と表現)であったのは注目ポイント。
雄大なアルプスを背にした閉塞感漂う学園都市で起きた猟奇殺人と、墓荒らしを発端としたもう一つの事件を追う二人の刑事によるバディものとしても、その事件の真相に迫るサスペンスとしても楽しめる内容であるとともに、何故タイトルが『クリムゾン・リバー』なのかわかった時の余韻が素晴らしい一作。

真紅の川の意味を、教えてくれたんだ。
ぶみ

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