山岡

座頭市牢破りの山岡のネタバレレビュー・内容・結末

座頭市牢破り(1967年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

以前、クライテリオンの全作ボックスを買って1作目から順番に見ていたが、前作『座頭市鉄火旅』で力尽きて見なくなってしまっていた。今回約4年ぶりに座頭市シリーズの続きを鑑賞。

久しぶりにみたが、やはりべらぼうに面白い。裸の大将のような親しみやすさもありながら、独特の不気味さをもった市のキャラクターの存在感、勝新・ゲスト俳優・脇役たちの素晴らしい演技、仕込み杖を使った緩急のバランスが素晴らしいアクション…どこをとっても最高に面白い。

今作は、シリーズの面白さの根幹をなす市の暴力性を相対化したような意欲作だった。市が何の気無しに殺してしまった若者の姉は女郎屋に売られしまいには自殺、市が善人の大親分だと思って助太刀した三國連太郎は実は小人物のせこい野郎で村をめちゃくちゃにしてしまう始末…ともすれば座頭市シリーズそのものを否定するかのようなストーリー展開である。しかしながら、悩み苦しみながらも暴力を振るわざるを得ない、殺さざるを得ない市の痛みがドラマにより深い厚みをもたらしてくれている。悪役の三國連太郎、西村晃のいずれもが剣士でないのも、この作品ならでは。

もちろん、シリーズお馴染みの展開も盛りだくさんで、丁半博打の胴元の不正をド派手に追及したり、蛾を爪楊枝で刺したり、女子にやたらもてたり、座頭市らしいシーンがしっかり用意されている。

これまでのシリーズになかった大きな挑戦がありながら、同時に座頭市らしい面白さも十分に味わえる稀有な作品。
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