シンタロー

今年の恋のシンタローのレビュー・感想・評価

今年の恋(1962年製作の映画)
3.9
木下惠介監督×岡田茉莉子主演作品。高校生の山田光はオシャレで色男なのが目立つのか、上級生のグループに制裁を受けたり、街の不良にカツアゲされる。対抗するために親友の相川一郎とボクシング部に入るが、返り討ちに合ってしまう。おまけに2人揃って成績も悪化。一郎の家は"愛川"という銀座の小料理屋で、両親は職人気質のお人好し。呑気な両親にやきもきして、一郎の世話を焼くのが姉で"愛川"の看板娘・美加子。成績不振の原因は友達のせいだと思い込んでいる。横浜の光の家でも同様。優秀な大学院生の兄・正と、亡くなった母親代わりの婆やは友達が悪いと注意する。ある日、正は一方的に迫ってくるガールフレンドと話をつけるために"愛川"に入る。弟の悪友の家を偵察する目的もあったが、美しい美加子に一目惚れしてしまい…。
サクッと観られる90分弱の軽快なラブコメディ。木下監督といえば、数々の重厚な名作がありますけど、本来はこんな喜劇が好きなのでは?と、後の木下惠介アワーなんかでも思いました。粋でテンポがいい台詞回しがなんとも楽しい。固定電話しかない時代のドタバタなやりとりも滑稽。ラブコメディの王道とも言える反発しながら惹かれ合う2人。特にドライブのシーンは秀逸。今も昔も変わらない感じが微笑ましい。年の瀬迫る雰囲気が味わい深く、京都知恩院で一緒につく除夜の鐘「とうとう新しい年だ」"今年の恋"の始まりです。
主演の岡田茉莉子。父は名優・岡田時彦で、木下監督は父親譲りのコメディセンスを見抜いていたのか?まるで和製オードリー・ヘプバーンのような素晴らしいコメディエンヌぶり。ご主人・吉田喜重かぶれしてからは、自分は感心しませんでしたけど、この頃は本当に輝いてました。長身で若かりし頃の貴乃花みたいな風貌の吉田輝雄。芝居は微妙ですが、岡田をはじめ周りの技巧派に引っ張られて、本作ではなかなか好演。東映で珍妙な作品に出てたイメージです。デビュー間もない田村正和。初々しいですね。自分は苦手な類の役者なので何も言えません。本作は助演陣が素晴らしい。婆やとして山田家の世話を焼く東山千栄子と、吉田&田村とのやりとりが笑える。兄弟揃って化け物呼ばわりはひどい。相川家ののほほんとした両親・三遊亭圓遊&浪花千栄子と、ちゃきちゃきした岡田の掛け合いも最高。3人の喜劇センスがお見事でした。
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