Maoryu002

悲しみは空の彼方にのMaoryu002のレビュー・感想・評価

悲しみは空の彼方に(1959年製作の映画)
4.4
女優を目指す白人ローラ(ラナ・ターナー)は、同じくシングルマザーの黒人アニー(ファニタ・ムーア)と出会い、彼女を子守役として一緒に暮らし始める。女優として成功するローラだったが娘スージー(サンドラ・ディー)との時間を持てず、アニーも白い肌を持ち黒人のルーツを嫌う娘サラジェーン(スーザン・コーナー)に頭を悩ませるようになる。

古典的メロドラマの雰囲気の中で、親子の絆に人種問題、芸能界の悪習を描く、ダグラス・サーク監督の最高傑作(だと思う)。

母娘4人の女性キャラクターが非常に個性的で、深い愛情で繋がりながらも反発し合う様子に目が離せなくなる。アニーは神がかり的に良い人過ぎたけど。
逆にスティーブを始め、登場する男はほとんど無味無臭だ。笑

ローラは女優として成功するけど、“お金を稼ぐけど私を見てくれない” と娘に責められる。対照的な母親代わりのアニーとの三角関係がとても繊細に描かれる。

そして、肌が白いゆえに自分のアイデンティが確立できず、迷走して暴走してしまうサラジェーン。
この母と娘の葛藤は涙なしには観られない。

人種問題をこうして親子の間に描いているところが、この作品の最も巧妙なところだろう。
アニーとサラジェーンだけではない。ローラも “私は差別したことはない” と言う割には、黒人は召使か運転手で、黒人の恋人は黒人だと決めつけている。
世の中のアンコンシャスバイアスによって、この時代の差別社会が出来上がっていることが見えてくる。

黒人への直接的差別の描写は少なく、人種問題を扱った作品と言うには甘いかもしれない。
ただ、父親がいなくても、決して見捨てずに愛情を注ぎ続ければ、子供は立派に成長するという、素晴らしい2人の母親の物語として傑作であることは間違いない。
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