道人

クロウ/飛翔伝説の道人のネタバレレビュー・内容・結末

クロウ/飛翔伝説(1994年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

【2013.12 BD観賞】

 子供の頃、昼間や夜にTVでやっていて、予備知識なくたくさん見た80〜90年代のアメリカ映画。その中でも、ストーリーはうろ覚えだけど印象に残っていた『クロウ/飛翔伝説』…この作品をこよなく愛する方からBDをお借りして、再び見ることが出来ました。

 非常に胸くそ悪いイカれた悪党どもが跋扈するデトロイトを舞台にした復讐譚。全編殆どの場面で、しとしと雨が降り、霧に包まれた夜の街…まず色彩が美しい。色を失ったようなモノクロ世界…これが復讐の為に蘇ったエリックに見えている世界なんだと思うと悲しくなりますが(回想シーンが色鮮やかなのがまた…)。

 でも、この作品が私の印象に残っていたのはエリック役のブランドン・リーの「眼」だったみたい。復讐鬼の眼…狂気も感じるんだけど、どこか潤んだような、とても優しい眼でもあるんですよね。本来とても優しい人間が、復讐の熱に浮かされなければならない悲劇…とにかくブランドンがとても格好いい。

 それと、エリックと少女・サラのシーンを覚えていたんだけど、生前歌っていた歌のフレーズを元にエリックとサラの心が再び通じ合うシーンがとても好き。
 この作品を「恋物語」として見ると、どの関係も決して成就しない恋愛ではあるんだけど…凄く精神的な結びつきが重視されているな、という感じの作品でした。エリックはそこからずっと動けない、サラは生きて行く中でどんどん先に行く…どうしてももう交差することはないんだけど、一種通過儀礼のような、束の間の恋もいいものです。
 …サラのエリックに対する想いは、現在進行形で「恋」として認識できて振る舞っていたかは分からないけれど、後年振り返ってみれば「あれが初恋だった」と思えるような、温かさと寂しさが混じるような、永遠の輝きを持つ邂逅だったと思うので、そんなところも眩しいです。
 サラ絡みではホットドック屋台のシーンもいい。アルブレヒト、ずっと見守ってきたんだな。

 本作の撮影中に逝ったブランドンの遺作。まだ28歳だったんだなぁ…。早世が惜しまれます。
道人

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