YasujiOshiba

続・激突!/カージャックのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

続・激突!/カージャック(1974年製作の映画)
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備忘のために:

 テキサス州のシュガーランドは、その名の通り砂糖のプランテーションから始まった街らしい。そんな甘い香りのする街に向かうのは、親権を剥奪された若い母親のルー・ジーン(ゴールディ・ホーン)と、彼女の勢いにおされて脱獄してしまうの人のよいチンピラのクロヴィス(ウィリアム・アザートン)。目的は金ではない。そこにいる、ふたりの子どもを取り返そうというわけだ。
 これはスピルバーグのデビュー作。日本では、この作品の前年に公開されて話題になった『激突』の続編を思わせるタイトルになっているけど、まったく別物のロードムービー。たしかにパトカーはカージャックされるし、誇張されすぎて終わってしまうようなカーチェイス(というよりもカーパレード)もある。お決まりの銃撃シーンもあるし、血も流れる。
 しかしである。そんな映画なのに、ここには人のよい連中しか出てこないのである。これまで人を殺さずに来たことを誇りにするタナー警部(ベン・ジョンソン)にしても、人質になったスライド巡査にしても、どこかで若い2人を信じてしまうナイスガイなのだ。
 もちろんテキサスの民兵や二人組のスナイパーにそんな感情はないし、だからこそ実におっかない存在でもあるのだけれど、スピルバーグの手にかかると、他所の世界から間違えて迷い込んで来た愚か者として描かれている。ここには、あの『激突』のトラックのような「不気味なもの」は出てこない。それは世界の向こう側に潜んでいて、ほんの少しその片鱗を見せるにすぎないのだ。
 だからあのラストシーンは美しいセピア色だったのだ。この郷愁の色は、アメリカという国がまだ大人で、未来をひらく若者たちの無思慮を見守る余裕を持っていた時代が、すでに失われて久しいという事態をマークしていたのではなかったのだろうか。
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