続・激突!/カージャックの作品情報・感想・評価

「続・激突!/カージャック」に投稿された感想・評価

【ニューシネマの中に宿る信念】
スピルバーグ作品の中で唯一のニューシネマと言えるのではないか。
70年代に商業映画デビューはしているが「激突!」に「ジョーズ」に「未知との遭遇」にと明らかにニューシネマとは隔たりのある娯楽作品を作り続けてきた彼にとって、「警官相手に絶望的な逃避行」というあらすじの作品はかなり異色に感じられる。
しかしそんな本作も所謂ニューシネマの型には収まりきらない独特の魅力がある。

まず第一に本作はコメディだ。
前半のカーチェイスやトイレのエピソードなどは抱腹絶倒である。
勿論そんな笑える場面の中でも、主人公たちはおどけた表情を見せることもなく必死に状況の打開を試みる。
しかし、彼らが必死であればある
ほど客観的に映画を見ている観客は笑いに誘われるのだ。
本作がそのことを正しく理解している証拠に、時折混じる「第三者の視点」が事態のおかしさを際立たせる作りになっている点が挙げられる。
例えば前半のカーチェイスでは、車を盗まれる夫婦やパトカーに乗り合わせた老人の呆れた態度が効いている。

そういったコミカルな効果を除いたとしてもスピルバーグの人間描写の深さ、秀逸さには眼を見張るものがある。
この若さでここまで深い洞察力を持ち合わせているとはやはり彼は只者ではない。
例えば従来のニューシネマならただの悪役として描写されがちであろう、里親夫婦にもしっかりとした厚みのあるキャラクターとして描かれる。
主人公夫婦とは明らかに富んでいて上品な夫婦だが、だからといって嫌味な人間達とはとても思えない。
ニューシネマをやりつつ決して「若者の反抗」だけの物語にしない所に、スピルバーグの大衆性がうかがえる。
勿論主人公達を追い詰めていく警官も同様だ。
印象的なのは、タナー警部とポプリン夫婦が始めて車のリアガラス越しに視線を交わすシーン。
タナーの乗る車のバックミラーに映るタナーの微笑みと、
夫婦の乗るパトカーのリアガラスに映るルージーンの微笑みを同一ショットに捉える撮影も見事だし、この二者の間の奇妙な連帯感も感じられる。
そして、この一連の出来事をバックミラーを通して傍観するスライドの視線も描くことで、スライドとタナーという師弟関係の物語も匂わせるのだ。
ラストでそれがはっきりと示されるがこの時点で既に伏線を張る脚本の巧さも感じられる。
伏線といえば、オープニングのトイレでの主人公二人の乱暴なキスシーンから中盤のキャンピングカーでの幸せなひと時への変容も見事だ。
またここでスライドとクロヴィスがする会話から浮かび上がる両者の溝も、全てが終わりどうしようもなくなった終盤で必死にクロヴィスを介抱するスライドを描くことで回収していく。ここも切ないながら上手い!

そういった脚本の妙もそうだが、ヴィルモスジグモンドのダイナミックな撮影やジョンウィリアムズのカントリー調に少しモダンな味付けをした音楽も忘れがたい。
ちなみにスピルバーグ×ジグモンド×ウィリアムズタッグは、後の「未知との遭遇」で遂に凄まじい迫力に到達する。

ということで、結論を言えば「スピルバーグは何をやっても凄かった」という月並みな表現になってしまうが、このおかしなニューシネマにもスピルバーグはしっかりと「スピルバーグ印」を刻印している(彼は脚本を担当していないが、本作は紛れもなく彼の映画だ)。
それは「守るべきもの」についての物語だ。
「子供を取り返す」というストーリーが、これ以上ないほど分かりやすくそのテーマを語るが、本作はタナーとスライドという二者にもそのテーマを込めている。
先述したミラー越しのショットとタナー警部がヴィジランテ集団に激怒するシーンが、ラストで回収されることでテーマが浮き彫りになる。
手段は誤ったが目的は子供を取り返そうとしただけの若夫婦の破滅を通して本作は実にニューシネマらしい「挫折」を描く。
しかし、その直後でタナーがスライドにするあるアクション、
そしてラストの字幕を見てほしい。
この理不尽な世界に対して「警官」は何ができるのか、何をすべきなのか。
タナーがニューシネマなんか生まれる前からずっと守り続けてきたその信念は、スライドへと着実に「継承」されいくのだ。
1993年8月7日、鑑賞。

有名な傑作「激突」がテレビムービーなので、この「続・激突/カージャック」がスピルバーグ監督の映画デビュー作。

この映画、「激突」を観た後から見たかったのだが、なかなか観られず、ようやく観れたと思ったら、酷い出来であった。
しかも、「続・激突」という邦題がついているのに、全然、「激突の続編ではない」。
男女2人の逃避行を警官がゾロゾロと追いかけるという締まりのない映画だった。

ただ、ゴールディ・ホーンが可愛くて、最高であった。
メインの逃走車両とパトカーが通ると周りの人間が終始車を見守りまくる。主人公達を再びパトカーに乗せる為に展開した中古車屋の銃撃戦や、冒頭の子供の泣き声と妻の駄々が被る会話、終盤の木を使った狙撃サスペンスにジグモンドの抜けが良い撮影が冴え渡った大変愉快な代物だった。
イカれた間で挿入される人物の間抜けズラはスピルバーグ節だろうけどマジックアワーの色気やダイナミックなクラッシュシーンなど撮影の腕が光る。
この映画の場合悲鳴は感情の発露ではなくひたすら「人間は鳴く生き物だ」というように撮される。クライマックスの家を不穏な煽りで捉えたりする辺り同年の「悪魔のいけにえ」との共通点も興味深い。
仲良くなっていく3人が微笑ましくて。
それだけに終盤が切ない。
本当にハイレベルなアメリカ映画 スピルバーグ「続・激突!カージャック」

邦題なんてどうでも良し
面白さ、切なさ、B級感!
やはり忘れてはならぬアメリカ映画というよりアメリカそのものの断片。
2017年現在でも色褪せぬ切り口です
Fieldpan

Fieldpanの感想・評価

2.5
・17/09/21:NHK-BS プレミアムシネマ【初鑑賞】
映見

映見の感想・評価

3.5
なんだこのタイトル!笑

娘を取り返す為の逃避行...。
何考えてんだ!って思いながら、観ていたました。ですが、本人達の立場になって考えると同情する部分もあるなぁと思いましたね。切ないラスト。


純粋な思いがあるのだけれど、本当の本当に不器用な人ってたまにいるじゃないですか?
私は、映画「サードパーソン」の息子を取り戻そうとする女性を思い出しました。そういう人って無性に応援したくなっちゃう。
Nash

Nashの感想・評価

3.5
スピルバーグ初の劇場作品。「激突!」とは何の関連もなく原題でもある「 sugar land 」に息子を取り戻しに行くカップルを描いたアメリカンニューシネマ的映画。
古き良きアメリカを思わせる描写が多く、ロードムービーとしても楽しめる作品。
naru

naruの感想・評価

3.7
自分達の子供を取り戻そうと、刑務所から脱獄し逃走する夫婦、それに巻き込まれる若き警官の逃走劇。パトカーの大名行列は観てて笑ってしまうし、自由奔放で可愛い妻は観ていて楽しい。けどコメディかと思えばそうではない、なんかジワっとこころに来る映画。
備忘のために:

 テキサス州のシュガーランドは、その名の通り砂糖のプランテーションから始まった街らしい。そんな甘い香りのする街に向かうのは、親権を剥奪された若い母親のルー・ジーン(ゴールディ・ホーン)と、彼女の勢いにおされて脱獄してしまうの人のよいチンピラのクロヴィス(ウィリアム・アザートン)。目的は金ではない。そこにいる、ふたりの子どもを取り返そうというわけだ。
 これはスピルバーグのデビュー作。日本では、この作品の前年に公開されて話題になった『激突』の続編を思わせるタイトルになっているけど、まったく別物のロードムービー。たしかにパトカーはカージャックされるし、誇張されすぎて終わってしまうようなカーチェイス(というよりもカーパレード)もある。お決まりの銃撃シーンもあるし、血も流れる。
 しかしである。そんな映画なのに、ここには人のよい連中しか出てこないのである。これまで人を殺さずに来たことを誇りにするタナー警部(ベン・ジョンソン)にしても、人質になったスライド巡査にしても、どこかで若い2人を信じてしまうナイスガイなのだ。
 もちろんテキサスの民兵や二人組のスナイパーにそんな感情はないし、だからこそ実におっかない存在でもあるのだけれど、スピルバーグの手にかかると、他所の世界から間違えて迷い込んで来た愚か者として描かれている。ここには、あの『激突』のトラックのような「不気味なもの」は出てこない。それは世界の向こう側に潜んでいて、ほんの少しその片鱗を見せるにすぎないのだ。
 だからあのラストシーンは美しいセピア色だったのだ。この郷愁の色は、アメリカという国がまだ大人で、未来をひらく若者たちの無思慮を見守る余裕を持っていた時代が、すでに失われて久しいという事態をマークしていたのではなかったのだろうか。
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