感想を以下ブログ「シネフィル倶楽部」にて掲載中。
■ライフ・イズ・ビューティフル
http://ameblo.jp/cinefil-club/entry-12268965228.html
懐かしの名作
「Buongiorno!Principessa!」
「名作」って、その響きだけでちょっと敷居というかハードルが高くなる気がしませんか?
その冠のせいで、観たことはないけれどなんだか重たいイメージを持ってしまったり、観るのが億劫になってしまう。
少し大仰かもしれませんが、下手すると「感動しないなんておかしい」という強迫観念的な、ともすればなんだか断罪されそうな響きを持ってますよね。
(…ちょっとオーバーか笑)
まぁ、そんな「名作」と呼ばれるような後世に語り継がれる作品のひとつに本作が挙げられます。
でも、例えば『シンドラーのリスト』の「名作」とはまたちょっと匂いが異なる気がしていて、こういう”意外なとっつきやすさ”を纏った「名作」もありますよね。
それは『ショーシャンクの空に』などが例に挙げられるようなものであり、本作がその代表例だと思っています。
とっても残酷で厳しい出来事を、素晴らしいユーモアや優しさや浪漫で包んで「それでも人生は素晴らしい!」、そんな風に感じさせてくれる素敵な作品です。
『La Vitta e Bella』
[邦題:ライフ・イズ・ビューティフル]
(1997)
冒頭に書いた「Buongiorno!Principessa!」というのは、劇中で頻繁に登場する主人公が奥さんにかけるセリフです。
「やあ!お姫様!」という意味で、全ての観客の心が明るくなる「言葉の魔法」です♪
本作はユーモアに溢れたハートウォーミングなイタリア映画となります。
余計な事は考えず感情に任せて観てたら、最後のラストシーンの30秒だけでどっひゃー!ってくらい泣きました。
「今さらこの名作を薦めるとかww」みたいに言われそうですが、何故このタイミングで挙げたか?
それは今まさに期間限定でこの作品がスクリーンに掛かっているからです。
「午前十時の映画祭」という企画で、いま上映している作品がこの『ライフ・イズ・ビューティフル』なんですね。
それではいつもの如くあらすじを♪
「Buonjorno!Lettore!」
(やあ!読書のみなさん!)
――――――――――――――
■『ライフ・イズ・ビューティフル』あらすじ
――――――――――――――
1939年、ユダヤ系イタリア人のグイドは、小学校の教師ドーラに恋をする。
彼の純粋さに惹かれた彼女は結婚を承諾。
やがて可愛い息子も生まれ、3人は幸せな日々を送っていた。
そんなある時、彼らに突然強制収容所への収監命令が下る────。
――――――――――――――
■ユーモア
――――――――――――――
主人公グイドの魅力たるや!
彼のユーモアのセンスがこの映画の方向性を牽引しているのは間違いありません。
ともすれば重くなりがちなところを、明るい方へ明るい方へ────。
グイドを演じているロベルト・ベニーニは、本作の監督でもあります。
彼は「イタリアのチャップリン」とも称される方。
主人公のキャラクターのおかげで、この映画のハードルがどれだけ下がっていることか!
とても作品の空気を軽やかにしています。
残念ながら彼は、この作品以降のキャリアでは良作には恵まれず、成功を収めたとは言い難い映画人生を歩みます。
しかし「グイド」を生み出し、演出し、体現したベニーニは素晴らしい映画人だなと思います。
映画は大きく二部構成のような構造になっていて、前半がラブストーリー、後半が家族ものになっています。
その前半で描かれる主人公グイドと奥さんのドーラの出会いや馴れ初めがとっても笑いに溢れていて、素敵なんですよねぇ!
グイドはサプライズと称して手を替え品を替え彼女の前に現れます。
その前半のクライマックスで、逆説的にそれまでの色々な出来事を全て伏線に変えて、鮮やかに回収してるのがたまらなく好きです!
ドーラの心の鍵はマリア様に尋ねてみたり、アイスクリームを買うタイミングだったり、乾いた帽子だったり♪
「偶然」が作り出す、ロマンティックな笑いが、観客の心を掴んで離しません(^ ^)
そして前半で描かれるのはユーモアを伴いながら、「男女の仲」。
身も蓋もない言い方をしてしまえば最終的には男と女を描いているので、一夜を共にするところが前半のクライマックスです。
いよいよふたりが結ばれる、というところではグイドが彼女を自分の部屋に招きます。
(このあたりはさすがイタリア男!という感じで、男女のあれやこれやに対しては率直です)
この映画が粋なのはその描き方。
自宅の玄関の扉を開けてさぁと言ったグイドに対し、彼女はわざとすぐ隣の花屋の奥にフェードアウトしていきます。
そして次のシーン────夜が明け、花屋から出てきたのはなんと夫婦となったグイドとドーラとその子供!
子供が産まれていて、2人はどうやらあの後無事に結婚して幸せな生活を送ってるらしいというところまで一気に持ってくのはお見事!
――――――――――――――
■ある視点
――――――――――――――
最後の最後に気付くんですが、冒頭のナレーションの声がこの子供のものだったことが分かります。
ドイツ側や、嫌な婚約者、収容所のこと、残酷な描写はことごとく排していますが、その理由がそこで分かります。
大人になって観ると、映画で切り出されているシーンの裏でどれだけ酷いことが起こっているか分かります。
でも映画ではそこを描かずに、徹頭徹尾グイドとジョズエの視点で物語を進めていき、強い苦味をホッとできる感動で包むことで、素敵な作品になっています。
「こんなにも酷かったんだぞ!」ではなく、「そんなものに屈してなるものか!」といった”強さ”と”明るさ”を一貫して描くことで、そのあたりへの批判を含みつつも、誰しもが前向きになれる人間賛歌となっています。
まぁ、あとはこの時代や戦争、それら全てに対する痛烈な批判はあのドイツ人の医者に含ませている気がしますね。
このキャラクターにはもう怒りを通り越して呆れてしまいました…。
――――――――――――――
■メインテーマ
――――――――――――――
名画には名曲がつきもの♪
牧歌的なメロディの中に、Bメロで少し陰のある旋律があり、本作の雰囲気を的確に表現した楽曲です。
――――――――――――――
■午前十時の映画祭
――――――――――――――
素晴らしい企画!
その一言に尽きる。
このブログで何度も述べてきている通り、長い人生で一本の映画が映画館で観られるのは、最近だと平均1~2ヶ月。
ロングランする作品も多くはありませんし、リバイバル上映も不確実なものです。
そんな状況だからこそ、この企画が輝くわけです。
>午前十時の映画祭公式サイト
一年を通して往年の名作から少し前の作品まで様々なラインナップを、TOHOシネマズなどの各対象劇場で朝10時から週替わりで上映するこの企画は、映画ファンに素晴らしい時間を与えてくれています。
何より、自分が映画を好きになったきっかけ『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を映画館で観る機会をくれたのですから♪
『アメリ』『ライフ・イズ・ビューティフル』を観たので、今年はこの後『ショーシャンクの空に』『アンタッチャブル』『アニーホール』『ローマの休日』『戦場のメリークリスマス』などを観たいと思っています。
皆さんも気になる作品があれば是非♪
「はい、観に行きます!」
――――――――――――――
■あとがき
――――――――――――――
冒頭で「名作」ってとか言っておきながら…やっぱり「名作」って看板をどうしてもかけたくなっちゃうのも映画ファンの心理なんですけどね(笑)
その表現がやはりしっくりくる素晴らしい作品だから(^^)
アカデミー賞7部門ノミネート、3部門受賞の実力、既に観たことある!という人は改めて観直してください。
未見という方は、是非これを機会にご覧になってみては?(^ ^)