フッカー

あの夏、いちばん静かな海。のフッカーのレビュー・感想・評価

3.7
上品な映画。北野武監督ってアウトレイジしか見たことなくてそのイメージだったんだけど、こんなに上品な作品作るのか!

喋らないと何を考えているか中々相手に伝わらない。けど喋らないからといって何も考えていないわけではない。
聴覚障害の二人、そのカップルの姿を静かに淡々と映していく。
映されるのは彼が仕事をする姿。そしてサーフィンを始める姿。

波が揺れる。黙々とそれに立ち向かう。波に乗れない。負けじとまた波乗りしようとする。そんな彼の姿を彼女は笑顔で浜から見つめている。
風の音。波の音。波乗りに失敗する音笑
主演二人が全く喋らなくても映画ってこんなに成立するんですね。
凄いのは、手話も筆談も電子ボードでの会話も、全く使わないんですよ。そこにあるのは表情のやり取り。仕草のやり取り。

ぶっちゃけ少し退屈と感じたシーンはちょこちょこありました。けれどもお笑い二人組とかw主演二人のやり取りは何か見ていられて、結局何か見ていられました笑
この「何か」が品のよさのお陰なのかなんなのかを、そこの部分を言語化したいとこなんですが笑

凄くいいのは最後なんですよ。山場というのがあるわけでもないのに、心にするっと入ってくる日常の話。あのラストがあったことで、「あぁ良い作品だったなあ」と思いました。

終わりよければ全てよしっていいますね笑サーフィン見たら思い出しそうな映画になりました。いや~しとやか。優しい。上品な、和菓子みたいな作品。タイトルが詩的でそれも好きなんですよね。