天豆てんまめ

カンゾー先生の天豆てんまめのレビュー・感想・評価

カンゾー先生(1998年製作の映画)
3.5
麻生久美子のデビュー作は、戦時中の瀬戸内の町が舞台の今は亡き巨匠、今村昌平監督作品でそれはもう鮮烈だった。戦争による栄養不足で肝臓を患う人が激増したのもあり、何でも肝臓の原因にしてしまうカンゾー先生こと柄本明の患者に向き合い、走って走って走りまくる姿が素晴らしい。

麻生久美子は貧しさの中、妹弟を養う為に男たちに身体を売っているがあっけらんかんとしている。そんな彼女がカンゾー先生の元に看護師としてやってくる。真っ黒に日焼けした自然児的な逞しい初々しさ、クライマックスにモリを片手に海中に鯨をおいかけ服がほどけヌードになっていくシーンがあるが、いやらしさは皆無で清々としていて美しい。この映画を観ると現在の麻生久美子の印象とは違うと思うが、彼女が日本映画界に寵愛を受け続けている原点が分かる。