がぶりえる

生きものの記録のがぶりえるのレビュー・感想・評価

生きものの記録(1955年製作の映画)
3.9
え?!
これ三船だったの!!
ってまず思った。
当時35歳の三船が60歳の役を演じているらしい。これは驚き。こんな特殊メイクの技術が昔からあったのか。体の痩せ細った感じとか、姿勢の曲がった感じとかもクオリティが高くて全然分からなかった。

僕は黒澤映画の「主人公は奮闘したけど、残念ながら社会は全く変わりませんでしたエンド」というのが好き。「羅生門」「悪いやつほどよく眠る」「天国と地獄」「生きる」なんかがそう。どれも「終」の文字が出た時の「これが人間か…」とうなだれるしかないあの感じが好み。本作もその類いで、救いのないラスト。結局主人公の目的は果たされず、観客に対して投げ掛ける形で終わる。「狂っているのはこの男か、それとも水爆に何の恐怖も示さない社会か」今にも通ずるテーマを黒澤流の力強い映像で見せてくれる。