がぶりえる

東京暮色のがぶりえるのレビュー・感想・評価

東京暮色(1957年製作の映画)
4.3
暗くて不穏。

家族の日常を繊細な描写で、かつちょっと可笑し味を含んで描く小津の他作品とは一味違う。とことん暗くて、笑いどころなど一つもない憂鬱な作品。

両親が離婚し、男手1つで育てられた姉妹。その次女を演じる有馬稲子が直面する不幸な事件の数々。人工妊娠中絶、すぐにいなくなる彼氏、分かり合えず悪化する父親との関係、浮気をして家を出ていったくせに全く悪びれる様子がない母....。だいぶ胸糞要素多め。ひたすらにアキちゃんが可哀相。原節子が理解者であることが唯一の救い。

そして、ラストの衝撃展開のあっけなさが怖い。周りの人がそれほど深刻な問題として考えていない状態で、ああいう悲惨な出来事が突然起こるのがリアルに感じた。原節子と父親だけは本気で心配してたけど、他の人達は「言う事聞かない困った子だねぇ〜」ぐらいにしか思ってないし、なんならアキちゃんの彼氏や母親は「面倒なのからは距離を置きたい」とさえ思ってそうなのがより胸糞悪い。

ラストの原節子の「アキちゃんやっぱりもっと愛されたかったんだと思う。」っていう台詞凄くその通りだと思う。「一人になりたいから」って言ってる人ほど、気にかけてあげなきゃダメだし、愛情注いであげなきゃ。だって、全て失ってから後悔したって遅いんだから。大切な人は戻ってこないんだから。

守るべき人、愛すべき人は一番近くにいるのに、失う瞬間までそのことの重要性に気付けないなんて愚かだよな...。ましてや、失ってもそのことに気付けない人がいるなんてな...。