TAK44マグナム

世界大戦争のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

世界大戦争(1961年製作の映画)
4.1
本日最大のニュースは何といっても北朝鮮が水爆実験に成功したと報じたものでしょう。
まさしく、「今そこにある危機」が現実となってゆく実感。
昨年はロシアのプーチン大統領が核兵器の使用も辞さない考えを持っていることを発表したりと、刻一刻と世界を核の脅威が蝕んでいっています。

世界で唯一、核兵器による攻撃を受けた我が国が製作した「世界大戦争」は、架空の二大陣営が衝突、ついには核戦争に発展してしまって世界が滅ぶ様をまざまざと見せつける衝撃的な特撮映画です。
現在よりも、広島・長崎の記憶が鮮やかであったろう製作当時では、本作を鑑賞した人々が受けるインパクトはいかほどのものであったのか。
相当なものであったことは想像に難くありません。

ミニチュアによる特撮など、多少古臭く感じてしまう部分もありますが、スチロールやウェハースまで使用したクライマックスの大都市崩壊シーンの、人々を飲み込んでゆく圧倒的な絶望感は今観ても全く色褪せておらず、古今東西、様々な核兵器や放射能の恐怖を描いた映画が作られ続けていますが、どれと比べても決して見劣りするものではないと思います。

本作の主役はあくまでも我々と同じ、普通に社会で暮らしている一般の人々です。
普通に仕事して、学校へ行き、食べて、話して、寝て、起きて・・・そして、結婚や進学など誰もが幸せな未来を夢見て生きています。
そんな人々の小さな幸せも、一握りの誰かのエゴやメンツのために無残にも破壊されてしまいます。
ドロドロに溶けた東京に飲み込まれてゆくのは、何の罪もない普通の人々なのです。

中盤、緊張の高まりがピークに達し、核攻撃寸前で危機回避をする場面があります。
ここで、攻撃を実際に行うことになる軍人たちは、ほっと胸をなでおろします。
彼らも、誰一人として核戦争など望んでやしないのです。
それでも、最終的には核戦争が勃発してしまいます。
何故なのか?
誰も望んでいないはずなのに。

現実に、核の拡散は間違いなく進んでいます。
使ったら最後、人類どころか地球という星にすむ全ての生命が失われるかもしれないほどの兵器を所持するという、この上なく重い責任を理解していないであろう権力者に核のスイッチを持たせる恐怖を、日常的に感じなければならない世界がはたして正常と言えるのでしょうか。
本作で描かれたような、愚かしい選択だけは避けてほしいと願ってやみません。

母なる海で、終焉を待つしかないラストが心をうちます。
笠智衆による「戦争は嫌だ。戦争をやめようともっと早く言えば良かったんだ」という台詞は世界中で戦争の火種がくすぶり始めた今こそ、普通に暮らす人々みんなが声にして、愚行を押し止める力(パワー)に変えるべき名台詞。
「人間は素晴らしいのに、一人もいなくなるんですか」
こんな哀しい言葉で、人間の歴史を閉めてはならないのです。

人間の素晴らしさを優しく描くと同時に、人間の愚かさをこれでもかと鋭く描いた本作は、東宝特撮映画の傑作と言えるでしょう。
核を玩具にする権力者の方たち、全員必見です。
そのスイッチを押す前に、よく観ろよ!


テレビ放送、レンタルDVDにて