ミシンそば

無法松の一生のミシンそばのレビュー・感想・評価

無法松の一生(1958年製作の映画)
4.0
今週の新作はなぜかどれも観る気が起きず、午前十時に逃げました。
先週やっていた阪妻バージョンは未見だから比較の仕様がないけれど、ヴェネツィア国際映画祭で最高賞を獲ったのも頷ける作り。
稲垣浩流にアレンジ、或いは昇華させたようなネオレアリズモとでもいうべき作りだと、自分は思い至った。

自分の手の届く範囲のみ、何がなんでも守り通す、松五郎もまた、そんな市井のヒーローとでも言うべき存在なのだろう。
だが悲しいかな松五郎は分を弁えすぎた。
それは吉岡大尉との友誼からか、無学な車夫に過ぎないと自嘲さえしたコンプレックスからか。
見返りを望まないと決めたはずなのに求めてしまい、そのことでさらに自己嫌悪を重ねる様はどこまでも悲しくて、「無法松の一生」と言うタイトルさえ皮肉に感じられる。

重ねて言うが、松五郎もまた市井のヒーローの一人だ。
良子と敏雄を始めとした小倉の人々や、映画を観た多くの人々がそうだと確信するはず。