不在

マイライフ・アズ・ア・ドッグの不在のレビュー・感想・評価

4.8
タイトルは直訳すると"犬のような僕の人生"。
一見すると蔑みのような題名だが、主人公の少年にとって犬は唯一対話出来る存在であり、犬と同等であるのは誇らしい事だ。
しかし彼の周りの人々はまさにその題名の通り少年を一人の人間として扱わず、散々振り回した挙句ライカにした事を彼にもしてしまう。
そうして少年は心の中の小さな宇宙へと押しやられてしまったのだ。
そこからは外の世界を眺める事しかできず、帰る方法も分からない。
やがて少年は自身に降りかかる悲劇にすら距離を置き始める。
この小さな宇宙では、悲しみと向き合う事すらままならないのだ。

この映画は高い所から落ちるイメージが何度も出てくるが、これは少年が少しずつ地球に戻ってきている、つまり自分から外の世界へ飛び出そうとしているという事だ。
映画の最後、遂に彼は地球へ降り立つ。
自分の悲劇を他人と比べる事をやめ、文字通り地に足をつけた少年は、やっと自分の夢を見られるようになった。
重力があるからこそ、人は寄り添い合えるのだ。
不在

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