幕のリア

吶喊(とっかん)の幕のリアのレビュー・感想・評価

吶喊(とっかん)(1975年製作の映画)
3.3
慶応末年、明治零年。
髷を落とした新撰組土方歳三を演ずるは仲代達矢。
奥羽列藩同盟仙台藩参謀に岸田森。
時代設定とカメオ出演だが堪らない配役に序盤から歓喜。
また、中盤には鉄砲名人として天本英世、後半には会津藩士として田中邦衛と、飽きさせない。

幕末明治期は日本の歴史の中で、限りなく平民に近い下級志士が起こした唯一の革命期である。
数多の星が瞬き消えていく、いかようにも描きようのある魅力溢れる時代の転換期。
本作で描かれているような若者のやり場のない情熱と欲望の暴走は日本国中に溢れていただろう。

歴史の授業では、ある日を境に西洋化に進み、民主主義国家への成熟を歩んでいるように教えられるが、実際はかような混乱の火種は西南の役で火を鎮められるまで10年は燻っていた。

カラス組なるゲリラ軍が、博徒、土方、百姓、漁師の烏合の衆で結成され、妓楼の女郎達が黒ずくめの上下を仕立て、遊撃隊として戊辰戦争戦線へと雪崩れ込む。

面白きを是とする若者と一攫千金を夢見る若者の二人を中心に展開される愚連隊風味の青春活劇だが、ドンパチだけで無い細やかなドラマとユーモアがATG作品だけあってユニーク。

板垣退助、岩倉具視、伊藤博文、日本円札のカットインがオシャレ。
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