アニマル泉

ザ・フォッグのアニマル泉のレビュー・感想・評価

ザ・フォッグ(1980年製作の映画)
4.3
ジョン・カーペンターの長編4作目。前作「ハロウィン」に続いての出世作だ。100年ぶりの濃霧に町の犠牲者たちが生き返って復讐に来る、ゾンビ映画である。
カーペンターは突然「揺れる」「落ちる」「割れる」「水が染み出す」、静寂な中でカタカタとコップが揺れたり、食器が割れたりする。この手法は黒沢清が受け継いでいる。本作ではゾンビは見せない。シルエットや部分でしか描かれない。ゾンビはハンセン病患者という設定だが、その描写はない。だから襲われる場面はオフショットになる。襲われて恐怖に引きつる被害者の顔、そのあとは見せない。オフビート感が本作の特徴だ。本作は「霧」が主役なのだが、襲うのはゾンビだ。この二段構えが恐怖を薄めていると思う。毒ガスのように霧に包まれたら次々いきなり倒れる方が怖いと思う。ゾンビたちは必ずまずドアをノックする。この律儀さが何だか可笑しかった。
本作は群像劇である。灯台で地元FMのDJをするエードリアン・バーボー(実際のカーペンター夫人)、牧師のハル・ホルブルックと町の有力者ジャネット・リーたちのグループ、ヒッチハイクのカップル、それぞれが惨劇に巻き込まれていく。最後は教会と灯台、二つの尖塔に収斂していくのだが、最後まで二股に別れてしまうのが本作の弱点だと思う。
MGM カラーシネスコ
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