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卒業のHIROのレビュー・感想・評価

卒業(1967年製作の映画)
4.5
ダスティン・ホフマン演じる大学を卒業したベンジャミンが、父の友人である人妻と関係を持ってしまい、その後ベンジャミンは彼女の娘と知り合い、真実の愛に目覚めていく様を描いたお話。

アメリカンニューシネマの代表的な作品で、後のハリウッド映画に革命を起こした。この作品がなければ今のハリウッド映画は全く違うものになっていたかもしれない。

「卒業」というタイトルから、ただの若者の恋愛を描いた青春映画かと思っていた。
しかし、そんな生ぬるいものではなかった。
社会や親の抑圧からの「卒業」を描いたお話だった。

冒頭のシーンは有名で、ベンジャミンが浮かない顔で動く歩道にただ乗っていて、他の人はスタスタと歩いて行く。これはまさしく社会の引かれたレールをエスカレーター式に歩んで行くことを表している。そんな将来に疑問や不安をベンジャミンは感じている。これはベンジャミンの"I want to be difference."というセリフからも伺える。
親からは過度な期待をかけられて、全て親の言う理想に沿って生きてきた。まさにこれは当時の腐敗した偽りのアメリカ社会を表しているんだと思う。
そんな現状からベンジャミンは何とか抜け出したいのだ。
そんな時に現れたエレーンに恋をしてしまう。
偽りの大人達の中に現れた純真無垢な彼女に安らぎのようなものを感じたのかもしれない。
ラストのシーンはあまりにも有名で様々な映画でマネされてる。
本当に素晴らしいシーンだった。
ハッピーエンドと思いきや、この時の2人の表情からは、親と決別して2人だけで生きていくんだという気持ちや、これからどうなるか分からないという不安を感じ取ることができる。

何気ないシーンにも様々な意味が込められていて、無駄な所がひとつもない。何度観ても新しい発見がある素晴らしい映画だと思う。
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