きんぽうげ

東京夜曲のきんぽうげのネタバレレビュー・内容・結末

東京夜曲(1997年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

庶民の暮らしかたの基本は、あれが正しい姿なのだろうか。現代において、銭湯とかの社交の場の事を思ってしまう。本当に、本来の意味における近所付き合いというものは消えてしまったのであろう今、子供の頃だったら、子供であるという単純な仲間意識のもとに、何かをして、一緒に物事を行えたはずなのに、大人となった今は集まることにも、何か理由付けが必要で、それがなければ、一緒に何事もできない寂しい世の中になってしまった自分の今としては、あの喫茶店のような存在は大きい。様々な人が集うだけでも、存在価値のある空間というのは、本当に少なくなった。というより、集まる側の意識の問題であろうと思うのだけれど、そういった空間は今、ああいった商店街に残されていないのかなあと、羨ましがったり、ほっとしたりもする。よくある過去の、あの時ああ言っていれば、人生は変わっていただろうなというような話自体はありふれている。だが、その人物を見つめてくれる人物がいる事は羨ましい。恐らく、作家志望の青年の目から、すなわち、市川準の視点は、あの青年そのものの視点であったのだろうとは思うが、死んでしまった大石という男とタミさん、そして浜中と、その妻の関係が浮き彫りにされていく。憐れみで結婚したタミさん。それを脇で分かったふりをしていたが、違っていたと放浪を始めた浜中。遂に大石を好きであった浜中の妻。どこかで相手を間違えてしまった男女たち。20年後その思いは噴き出す。市井の人の暖かみというか囲む姿がよく出ている。写真家の話もありそうだなあと思わせるし、その街なりの歴史を感じさせる。CD屋の娘がふられてしまうのは可哀想だ。前回の「トキワ荘の青春」の時も言い味を出していた女優である。マンガチックなんだけれども、存在感が不思議とある。
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