このレビューはネタバレを含みます
一言目のセリフを喋るまでが長ぇ(笑)
まず、何もないド田舎に大型トラックが止まり、助手席から主人公っぽい若い男が降りてくる。
トラックはそのまま走り去り、若い男1は歩いて近くのプレハブみたいなところに行き、入口で誰かを待っている。
しばらくすると、そこに車に乗った同年代の若い男2が現れ、同じように誰かを待っている。
更に待っていると、車に乗ったおっさんが現れ、男たちを無視してプレハブに入っていく。
ちょっとするとプレハブのドアが開き、おっさんが、
「お前ら、仕事が欲しいならさっさと入りな」
と言うこの言葉が、本作の最初のセリフである。
ここまでで既に長いが、2人がプレハブに入ると、おっさんは一方的に仕事内容の説明を始める。
要約すると、「ブロークバック・マウンテンに行って、放牧されてる羊を野生の獣から守れ。ただし、森林局が指定する野営地から羊の放牧地は離れてるから、2人のうち1人は夜も野営地に戻らず、森林局の役人にバレないように放牧地にテント張って夜中も羊を見張ってろ」って指示。
ちなみに、若い男たちはまだ一言も喋ってない。
おっさんに、「分かったらさっさと行け」みたいな空気を出された2人はプレハブを出る。
若い男2「ジャック・ツイストだ」
若い男1「イニス」
ここまで約6分30秒。
やっと主役の2人が初対面の他人だってことが分かるわけだが、あまりにも喋らないもんだから、「何なのこの2人?」って興味を抱くには十分な時間だった。
引きつけ方がマジで上手い。
そして舞台は放牧地の山に移り、てっきり長閑な自然の中で、羊飼いの2人の友情が育まれる映画かと思っていたら、ストーリーは急展開を迎える。
誰も来ない山の中で生活しているうちに2人は親しくなり、ある日、一線を越えて肉体関係を持つことに。
どうやら、同性愛がテーマの映画だったらしい。
時代は1960年代で、同性愛者だってことが街の人に知れただけで、殺されたりすることもあるような時代っぽい。
それも理解に苦しむが、更に理解に苦しむのが、イニスもツイストも後に女性と結婚して子どもを授かること。
世間体を気にして結婚したわけでもないようだし、なんだかよく分からない。
それでもツイストは、父と旦那としての役割は果たしているように見えるのでマシだが、陰気な自己中キャラのイニスはクズっぷりが酷い。
生活費が厳しい中でも健気に頑張る奥さん役のミシェル・ウィリアムズに隠れて、って言っても見つかってるんだけど、ツイストとイチャコラするイニス。
もうね、ミシェル・ウィリアムズが可哀想で可哀想で可愛い。あぁ可愛い。
あんな可愛い奥さんのためなら、わしゃ月〜日でスキップして羊追い回すわい。
ちなみに、シリアスな展開の後も音楽は変わらず長閑なまま。
アカデミー賞・音楽と内容が合ってない部門があったら、受賞待ったなしである。
ほんで、映画の中では、出会いからラストまで20年くらいの時間が流れていて、イニスにも色々な変化が生まれる。
でもイニスは嫌いなタイプの人間なので、私は最後まで嫌いなままだった。
けど、2020年現在、私が「同性が好きで何がいけないんだ」と思える世の中になっていて、普通に「イニス嫌いだわー」と思えちゃうことを踏まえて考えると、変わった時代の大きさに気付かされる。
まぁ今でも当事者にしか分からない悩みはあるんだろうけど、例えゆっくりとでも時代は変わっていると信じたい。