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夢売るふたりのoden8のレビュー・感想・評価

夢売るふたり(2012年製作の映画)
4.5
昨日までは、夢に向かって走っていたはずなのに。気がついたら、思い描いたことではないものを追っかけていた。なんてことは珍しくないよね。
一体、何がそうさせてしまうのだろうか?

過度な希望故に感じる絶望か。絶望の淵に見出してしまった幻の希望か。他者を幸せにする為という言い訳か。自分はこうあるべきだと、願い奮たたせる強がりか。
 
ただただ、大好きな人と幸せでいたい。そんな些細なことのはずの"夢"が。
まぁ、めちゃくそ遠いんだわさね。砂漠で見がちな蜃気楼のオアシスの様にね。
"夢"がさ。すぐそこにあるはずの"幸せ"を有耶無耶にしちゃうんだよ。なんてこったい。

性格が悪い僕からすると…。
ちょっとね。これは面白過ぎたよね。
"夢"や"幸せ"に対する皮肉や真理がわやくちゃに含まれているような気がしてさ。言葉で言い表せないのが、非常に悔しいよね。感情や考えがぐっちゃぐちゃにされちゃったんだもの。

貫也のどえりゃ〜クズダメ男っぷり。それも、見方を変えると。
コイツはなんかほっとけないというまやかしの愛嬌になるし。彼がダメでいてくれるから、自分のダメさと向き合わないでええんとちゃうかという言い訳にできるものね。
それに、認めたくはないが。彼は自分が弱いことを知っているから、他者の弱さにも寛容でいられるのかもしれない。

逆に。里子は強過ぎるんだよね。里子に限ったことではなく、この作品に登場するほとんどの女性がね。
彼女たちは、何処かで貫也の様な男に依存しているかのように見えがちなんだけど。本質的には、自分の両足で立ってはる人で。彼の存在は、人生を彩る為のオプションにしか過ぎないのかもしれない。勿論で、彼が真摯さを見せてくれることを心から願ってはいるのだろけど。

ダメ男の貫也を演じた阿部サダヲさんは、素の阿部サダヲさんを疑ってしまいたくなるほどハマってたよね。もうね。断トツぶっちぎりのダメ男オブザイヤーだったものね。こういう判断基準を有耶無耶にしてくる掴み所のない役をさせたら天下一品だよね。

松たか子さんも、相変わらずお素敵過ぎましたわん。一見すると柔和そうだけど、腹に一本のぶってい槍を備えてはる。そんな心の強さを持った女性を表現するのがホンマにお上手ですよね。ホンマ惚れてまいますわん。
もうね。怒りを押し殺してる表情が堪りませんのよ。そして、時折見せはる。崩れてしまいそうな自分を何とか保つ為に、気丈に振る舞おうと震わせるお声と
表情ね。抱きしめたくなっちゃいますよね。

夢見る女性を騙す物語なので、決して清々しい面白さとは言えませぬが。この禍々しさが、めっちゃ好みでしたん。

追いかけている
夢は同じなのに
夢を売る者 と 夢を買う者
この取引は決して成立しない
あなたの夢は
誰の両足でもなく
あなたの両足でしか辿り着けないの

Cast(役者·キャラ) 4.5
Story(物語) 4.5
Architecture(構成) 4.5
Picture(画) 4.5
Acoustic (音) 4.5
24-36
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