ルイまる子

蛇イチゴのルイまる子のレビュー・感想・評価

蛇イチゴ(2003年製作の映画)
4.1
この映画は数ある西川美和監督の作品の中で一番好きかも。『ゆれる』『ディアドクター』と観て来て、世間の評価の高さはある程度同意だが、自分はかなり強い嫌悪感を持っていた。人間描写が性悪説だから。信仰心があるなしに関わらず、人間は善行を積めば報われる。悪行をすれば逆の結果を受ける、とちゃんと描いて欲しい、損ばかりしてる人が最後まで損してていいの?とか、一見優しそうな女が(よく見てないと騙されかねない聖女風?)実はやな女で、いやいやこの人達ってクソ?結構絶望的?なんて思ったり。それらを見る側の判断に委ねており、監督は丸投げ。だからイラつく、、

しかし、良かったです『蛇イチゴ』は。

ちゃんと監督の言いたい事があった。
家族みんな嘘をついてるが、そうせざるおえない現実もある。これはとても自然な姿だ。

おじいちゃんが死に、お父さんの借金を知り地獄の筈なのに、 なんか息の詰まるような日々から解放され、お母さんはなんだかものすごく生き生きしている。なんかわかるな~

しかも、お母さんは、詐欺師みたいな長男に言う。周ちゃん、ずっとこの家に居てよ。あんたむちゃくちゃだけど、居てくれると面白いのよ。倫子はいい子過ぎて息がつまるのよ。

わかるな~。

優等生過ぎると息が詰まる。

うそつき、劣等生、犯罪者、でも面白い。

そんな人が家族に居ると、きっと笑いが絶えない。犯罪者っていうところが、笑えないけど…。

あと、倫子が家族にお兄さんを信じるのはやめろ、という場面。二人ともそれを聞いても、もう疲れたんだよと、娘の話も早々に席を立つ。

これもわかるな~。

四角四面に世の中渡るのはもう疲れる。違法であろうが何であろうが、もう『正攻法』は疲れるんだよっていうところ。あるいは、息子にお金を全部盗られることになるかもしれないが、そんな事考えるのも疲れたところ。

あと、これまたお母さんの台詞。

お父さんがいい加減な息子に自分の『血』を感じ気味悪がってたのよ~という台詞!そういう『呪われた血』を持った人って居る。遊び人でどうしようもないそんな人がなんとか我慢して、人から見破られないようサラリーマンの仮面を被っているが、息子がまるっきり自分の暗部を受け継いでたとしたら、その息子を抹殺したくなる。

役者は素晴らしい。特に大谷直子、宮迫の演技には感動した。

最後に音楽!この、ちょっとぞくっとする恐怖感や緊張感を、少しとぼけた音楽で軽減している。

おそるべし!西川美和監督!


2010年5月視聴
Yahoo 映画レビューから転載
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