デイジーベル

赤い影のデイジーベルのレビュー・感想・評価

赤い影(1973年製作の映画)
4.0
「映画史上 最も有名かも知れない、長いセックスシーン」

ニコラスローグ監督は撮影監督出身らしく、色彩感覚、カメラワークが素晴らしく、映像がとにかく美しい。(しかも舞台はヴェネツィアだ)

◯ストーリー◯
_(┐「ε:)_ 事故で娘を亡くした夫婦が、霊感のある姉妹と出会い、″警告″を受けるが…。

●不安と混乱●
我々を不安にさせる、情報量少な目の演出(ミスリードや断片的なカット、心象風景を表すカット、翻訳されない会話など)、更に″現実″と″幻想″が入り混じっており、我々を混乱させる。
(そしてこの謎は最後に一気に繋がる。その″快感″とも呼べる″恐怖″と″絶望″に我々は驚嘆するしかない)

圧倒的な悲しみと後悔が幻想を生み出したのか。それは霊感的な力や虫の知らせ(予知能力)なのか。疑心暗鬼に陥った心理状態を表しているのか。全ては妄想なのか、現実なのか。

「今を見てはだめ」

それ(赤い影)は、亡き娘の面影であり、死の象徴(警告)


【雑記】
久しぶりに鑑賞した所、完全に内容を忘れている事に驚いた。断片的に映像は覚えていたが、結末すら忘れていた……その事実に恐怖感を覚えつつも、お陰で新鮮でした。
※「回転」に引き続き、ホラー系作品の中では、個人的には上位の傑作です。


【ネタバレ雑記】
監督曰く、「男女の絶望的なまでの″感覚″の違い、恋愛と結婚の明らかな違い」を根底に表現しているらしい。(夫婦共に食事をするシーンが無い事でも何か違和感を感じた人もいるだろう。)
心理や感覚を重視する女性。
論理と理屈を重視する男性。
相手を知るための恋愛、自分を理解して欲しい結婚。
その″感覚″の違いはセックスや愛でも埋まらない事。(長いセックスシーンはこの事を示唆していると思える。)
結局、感覚を信じた妻は生き残り、警告を無視した旦那は死んだのだ。(妻の表情が悲しみでなくどこか晴れやかに感じるのは、娘がパパと一緒になれた歓びと、もう喧嘩も無い、そして旦那は私の中で生き続ける、やっとわかりあえた…的な意味合いらしい。)詰まる所、男は女には勝てない。これが監督が描きたかった事のようだ。(無意識でもこの事実を感じ取っている部分もあるが故に、必要以上にこの作品から″恐怖″を感じるのかも知れない。)