明石です

XYZマーダーズの明石ですのレビュー・感想・評価

XYZマーダーズ(1985年製作の映画)
4.4
ハリウッドを代表するヒットメイカーたちによる愛すべきお馬鹿映画。

生涯で初めてできた恋人を殺人鬼の魔の手から救うべく奮闘する非モテ男の一夜かぎりの英雄譚。そして彼女を救い出しヒーローになるも関係者が全員死んでしまい(笑)、殺人犯として電気椅子へ送られるという最高にお馬鹿なお話。しかしこれが面白いのです。

サム・ライミが監督、コーエン兄弟が脚本というまさかのコンビ(というよりトリオ)が送るスラップスティックコメディ。カメラワークで遊び、特殊効果で遊び、そして何事もトゥーマッチな作風に下支えされたお馬鹿なネタの数々で遊びと、こんな凄い人たちが集まったのに(いや、集まったからこそ?)こんな底抜けにお間抜けなドタバタ劇になるとは、、と思いながらもあまりに可笑しくて大笑いしながら見ました。

女性にモテないピーター・パーカー風のヘタレ男が、悪漢どもを成敗しながらハッピーエンドに向けて一直線、、かと思いきや、ピタゴラスイッチ的偶然の連続で電気椅子に繋がっちゃう筋書きがそもそも可笑しい。そして駆けつけた尼僧(笑)の集団によってちゃっかり救い出されるエンディングも私的には大好き。しかし3人がまだ若手だった頃の作品で、製作会社の圧力により思い通りに作れなかった結果、本国では黒歴史扱いされているのだそう。こんなに面白いのに?

『死霊のはらわた』3部作に主演したサムライミの幼なじみブルース・キャンベルが、本作では脇役になり、それも女ったらしのイヤな男の役に笑。当初はこのサムライミ印のキャプテンスーパーマーケットが主演で想定されていたようですが、メジャー制作会社の以降で強引に変更された模様。そしてポストプロダクション段階でも思い通りの編集ができなかったのが、サムライミとコーエンの3人が本作を「無かったこと」にしてる理由なのだとか。ブルース・キャンベル主演のも見たかったなあ。ハンサムで女性に目がないイヤミな男の役(ガッハッハ!)もよく似合ってたけど笑。

本作の80年代ならではのピカピカSFXや、原色の色合いを強調した過剰なネオンライトに照らされるデトロイトの街並み、それから漫画映画のような軽いSEを駆使したコミックタッチ満載の演出は、いかにもサムライミらしいトゥーマッチな質感で、本人曰く「漫画の擬態語感覚を追求した」とのこと。彼がカメラ屋の息子や前衛映画の監督である前に、大のコミックオタクだったことを忘れてはいけませんね(その意味では、これがのちに巡り巡ってスパイダーマンになるというのもあながち適当な比喩ではないかもしれない笑)。

コーエン兄弟とサムライミは、両者とも少年時代を8ミリ映画撮影に明け暮れて過ごし、パイロット版を作って資金集めをしたデビュー作がインディペンデント映画にもかかわらず異例の成功を収めたというあたり、歩んできた映画人生にかなりの共通点を持つお二人(ではなく三人)。そんな彼らがデビュー2作目でほとんどプライベートレベル(笑)での協力をしてるのは本当に微笑ましいですね。これが黒歴史とは…!!

頭からお尻まで徹頭徹尾、愛すべきお馬鹿映画でした。ラストまで笑いを絶やすことなく見れ、これがカルトムービーの地位に留め置かれてるなんてもったいないとさえ思ってしまう。たとえばザッカー兄弟の映画等が好きな人(がもしいれば)には積極的にオススメして、この度を越したお馬鹿さ加減に沼らせたい。
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