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千の顔を持つ男のENDOのレビュー・感想・評価

千の顔を持つ男(1957年製作の映画)
4.0
ギャグニー58歳にして演じるチェイニー伝記。チェイニー出演作は『殴られる彼奴』と『知られぬ人』しか観たことがないけど清濁併せ持ついい役者である。舞台上での動きはサイレント映画を彷彿とさせメロドラマの筋とは全く別の次元で観るものを感動させる。ライティングがホラー映画のように強烈で濃い影が壁に落ちまくるがこれも皺隠しのための打開策だと思うと泣けてくる。人生の重要な場面で出てくる障碍者達がチェイニーの人生観を揺さぶって芸の肥やしとなる。激情に駆られまくりのマローンとの確執は妻であり息子の母という枠内に押し込めようとするチェイニーのエゴの強さに他ならず、これこそメロドラマは駆動する要因となる。聖女グリアとの幸せな日々はリスペクトの為せる業。当て付けに劇中乱入して酸を呷ったマローンは歌手生命を自ら断つのだが、チェイニーその人はトーキー映画勃興期に咽頭癌で声を失う皮肉。その声は記録もされず永遠に失われている。手話という身振りでJR.に渡される役者魂。滂沱の涙。
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