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宮本武蔵 巌流島の決斗の一のレビュー・感想・評価

宮本武蔵 巌流島の決斗(1965年製作の映画)
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五部作すべて観て、武蔵とともに5年を経て錦之助の重たい威光が増していくのもおもしろいが、一貫して変わらない浪花千栄子の執念深さに最も感心する。千栄子が荒々しい男たちに担がれわっしょいわっしょいというかんじに景気よく登場するだけでもう嬉しいもんね。今回も武蔵との決闘目前の小次郎に「助太刀いたす!」と直訴までしにいく始末で、狂ったおばばと嘲り笑うのでは済まない凄みを感じる。そんな千栄子が孫の顔を見て泣き崩れ、「タケゾウ、負けるでないぞ~」と小舟に乗る武蔵を見送る姿には、この五部作は浪花千栄子おばばの敵討ちの旅だったのではと錯覚するような謎の感動があった。武蔵は武蔵で遅刻・瞬殺・即勝ち逃げという相変わらず勝つことに本気(マジ)なやり口で小次郎を伸し、剣の道を志した日を思い出しながら「空虚…」といつもの独り言エンディングであった。
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