Yutaka

MのYutakaのレビュー・感想・評価

M(1931年製作の映画)
5.0
異次元の傑作。初フリッツ・ラングで所謂サイコスリラーの走りとも言われる本作を見たわけだけど、近年のそのジャンルの映画とは比べ物にならない映画的美学と人間の怖さがあった。
集団心理の恐ろしさを描く映画はこの後も沢山あるけど、本作の製作背景にあるナチスの台頭を踏まえるとその説得力がレベル違うし、それが最後に反転されて展開される構造なのがめちゃくちゃ秀逸。正義と悪の違いや、人権問題、断罪に伴う罪深さなど、人間の本質的な部分を突き付けられてちょっと気分が悪くなった。
トーキー初期にも関わらず、凄まじい技法が山盛りで震えるようなショットもいっぱいあった。警察と犯罪シンジケートのカットバック演出や、犯人の表情に鬼気迫るズームイン。間接的な演出で繋ぐ見せない演出もキレッキレだった。
こういう古典的名作の中でも飛び抜けたものを見るとただただ打ちのめされる。
Yutaka

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