クレミ

Mのクレミのレビュー・感想・評価

M(1931年製作の映画)
4.2
「メトロポリス」でもそうだったけど、フリッツラングはこういう集団心理の恐ろしさを描くのがとても上手い、そして怖い。
なかなか捕まらない連続殺人犯の存在により疑心暗鬼になり、集団で「悪」を裁こうとする。前半で連続少女殺人の犯人の気味悪さを存分に見せつけてくるので、その犯人を裁こうとする集団の恐ろしさが余計に際立つ。また、生まれ持った精神異常をどう裁くのか、誰が犯罪を定義付け、誰が裁くのかという今現在もなかなか解決しない問題にも踏み込み、あえて含みを持たせたラストで我々にメッセージを投げかける。

フリッツラングの初めてのトーキー作品らしいが、サイレント寄りの演出であえて静かな作品に仕立てており、騒ぎ立てる群衆と“M”の不気味な口笛を上手く強調させていた。

連続殺人や警察の捜査、民衆の暴走などがもたらす結果が全て罪の無い子どもたちに向けられるという構造も考えさせられる。

フリッツラング好きだわぁ。
クレミ

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