晴れない空の降らない雨

カメラマンの復讐の晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

カメラマンの復讐(1912年製作の映画)
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 ロシア・アニメーション黎明期の代名詞的存在スタレーヴィチ。『カメラマンの復讐』はその初期作品で、彼が最も得意としていたパペットアニメーションである(スタレーヴィチはロシアにおけるセルアニメの創始者でもあった)。

 ストーリー:クワガタ夫婦の夫が出張先でトンボと不倫。横恋慕したバッタが実は映画カメラマンで、現場を隠し撮り。妻も絵描きのカミキリ虫(?)とお楽しみのところに夫が帰宅し、絵描きは暖炉に飛び込み自殺。残された油絵で妻を叩く夫。煙突から逃げ出す、落ちる、後ろから羽交い締め、ひっくり返すの大喧嘩。その後仲直りして2人で映画館に行ったら……
 
 信じがたいクオリティだ。パペット、セット、小道具がどれも精巧であるとか、動きが丁寧というだけでなく、ちゃんと動きから感情が伝わり、またコミカルで今なお見る人を笑わせてくれる。
 ラブホテルも出てくるし、浮気シーンが割と生々しい。初期のアニメーションらしく、子どものためということは全く考えられておらず、自由奔放な内容となっている。
 
 スタレーヴィチはロシア革命により制作の資金繰りに苦しみ、フランスに亡命して活動を続ける。弟子や助手はいなかったので、その技術はロシアにまったく残らなかったという。