imurimuri

クレヨンしんちゃん 爆発!温泉わくわく大決戦のimurimuriのレビュー・感想・評価

4.6
シン・ゴジラが話題の今もう一度見たい名作

この映画はクレしん劇場版史上最も興行収入が低く、最も人気のない作品ではあるんだけど、私的クレしんランキングでは堂々の第2位である

この映画の予告編は嘘予告として悪名高いんだけど、個人的にはあの「野原一家離散」予告編はそこまで嘘を言ってないと思っている。というのは、この作品における野原一家の軸としては、冒頭に引き起こされる家庭不和から如何にして普段の「野原一家」に戻るのかというところに一貫して焦点が当てられているから。
この映画で野原一家は、善悪両組織の目的の地点が春日部にある野原家であること(何よりもこれが家族不和の原因となっている)から、ある意味当事者として、なのに当事者としての主体性を常に剥奪された形で、巻き込まれるようにして不本意に逃走劇へと帯同させられていく(同じ逃走劇である暗黒タマタマと違い、本作では巻き込まれるうえで一切野原一家にその責任も原因も見出せない)。
そして、敵対する組織との対決及び直接的大敗北を経て、「ウチへ帰ろう」というヒロシの言葉とともに、野原一家が改めて一つとなって、自らの意思で困難に立ち向かっていく。ここではじめて野原一家はこの映画のなかで主体性を取り戻すことができる。その構図はさながら、ゲド戦記『影との戦い』のなかで「影から逃げるのではなく、自分から立ち向かえ」という師オジオンの指南のもと、自ら影に立ち向かっていったゲドのそれを髣髴とさせる。

さて、このレビューの最初にシン・ゴジラというワードを出したけど、実はこの映画はゴジラへのオマージュに満ちており、それが大事な見所のひとつとなっている。

そしてまた、この映画は巨大ロボットものでもある。敵組織の中枢である巨大ロボットは、その巨大さと重量感にものすごく説得力のある造形で、クレしんの日常の舞台である日本及び春日部に実際的に多大な被害を及ぼしたという点で、歴代でも最凶クラスの敵となっている。
そしてラストの野原一家対巨大ロボットのバトルの爆発力がすごい。いわゆる神作画と言われるクオリティで魅せてくれる

そして本作はゲストキャラも豪華で、丹波哲郎がほぼ本人そのまんまで登場するし、指宿ちゃん(田村ゆかり)がかわいいし、塩沢ぶりぶりざえもんの最後のセリフ付き登場作品でもある。

丹波さんとしんのすけの入浴シーンを見てお風呂に入りたくなり、敵組織YUZAME(YAZAWAロゴのオマージュ)のリーダーアカマミレと温泉Gメン草津の過去エピソードを見て銭湯に行きたくなり、この映画を見て温泉に行きたくなる

あと、同時上映のメイドイン埼玉については、文句を付ける余地がない、深層心理に直接干渉してくるかのようなとんでもないエネルギーをもった素晴らしい短編作品であり、いい意味でトラウマになること間違いなし
imurimuri

imurimuri