akrutm

画家と庭師とカンパーニュのakrutmのレビュー・感想・評価

画家と庭師とカンパーニュ(2007年製作の映画)
4.0
邦題どおりに、緑豊かなカンパーニュ(=田舎)を舞台に、初老の画家と庭師の交流を描いた、ジャン・ベッケル監督の癒し系ドラマ映画。原作は、画家でもあるアンリ・クエコの同名小説。

カンパーニュ(=田舎)を画家・庭師と並置する邦題の意図はよくわからないが、フランスの片田舎を舞台に画家と庭師が描かれるだろうとの当たり前の想像はできる。特に、ジヴェルニーに自ら作った庭園を描きながら人生の後半を過ごしたモネや、田舎にこもって自然主義的な風景画を描いたバルビゾン派などを思い浮かべれば、田舎で風景画を書いている画家と彼の絵のモチーフとなる庭を手入れしている庭師の交流を描いているように考えてしまう。

しかし、実際の映画の中身はこのような想像とちょっと違って、画家と庭師の交流が描かれるのはそのとおりなのだが、ダニエル・オートゥイユ演じる主人公の画家は田舎を愛するわけでもなく、自然主義的な風景がを描いているわけでもない。逆に、人物画(裸婦画)を得意とし、多くのモデルの女性と関係を持ったことが原因で妻との離婚調停中の都会派の画家である。でも、そんな生活にちょっと嫌気が差し、両親が亡くなって空き家になった実家をアトリエに、荒れ放題の庭を家庭菜園にしようと考えて庭師を募集する。そして庭師として現れたのが、田舎でずっと暮らしてきた小学校時代の同級生なのである。

この庭師はずっと田舎で暮らしていて、国鉄を定年まで勤め上げたあとに、趣味でもあった庭いじりを仕事とすべく庭師になった。田舎で家族と暮らすという生活の素朴さや人間としての純朴さに惹かれて、都会派の画家が自分の生き方を見つめ直していくのがメインテーマである。特にドラマティックな出来事が起こるわけでもなく、おおよそ予想できるようなストーリーなので、ダニエル・オートゥイユとジャン=ピエール・ダルッサンの熟練した演技を楽しむことができなければ、平凡な作品と感じるであろう。個人的には、二人の演技が大好きなので、それだけで満足。もちろんダニエル・オートゥイユは当然良いとして、個人的にはやはりジャン=ピエール・ダルッサン。こういう演技をさせたらピカ一だろう。でも、ロベール・ゲディギャン監督の『海辺の家族たち』では、本作の画家のような都会派で年の離れた女性を恋人に持つ役も演じている。

画家の若い恋人役のアレクシア・バルリエや娘役のエロディ・ナヴァールなど、美形な女性が出てくるので目の保養にもなる。でも、自分は娘くらいの若い恋人がいながら、自分と同じくらいの年齢の男性を恋人(アナイス・ドゥムースティエなので、すごく若いわけでもないが)として連れてきた娘は認めないというのはちょっと自己チューだけれど、心情的には理解できる。
akrutm

akrutm