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ミステリー・トレインのkouのレビュー・感想・評価

ミステリー・トレイン(1989年製作の映画)
4.0
《同時刻を過ごした三組》
ジム・ジャームッシュがメンフィスのホテルに泊まる人々をオムニバス形式で描いた作品。各エピソードが同時刻に起こり、それを繋ぐようにホテルのフロントとベルボーイの会話、銃声、エルヴィス・プレスリーの「ブルームーン」が挟まれる。

オムニバスでありそれぞれの登場人物が僅かに影響し合う。そのエピソードの重なり具体がおもしろい。その重なりは各話が進むごとに少しずつ複雑に重なっていくのだ。初めはなんてこと無いシーンの重なりも、3つ目のオムニバスを観ているときには全く違った雰囲気を持っていく。

とても言葉で表現しづらい感覚を持つ映画だと思う。それぞれが別々の時を生きていながら、それでも同時刻にそれらは起こっている。彼らはどこかから来た、元々のメンフィスの住民ではなく、そこに吸い寄せられ、同じ夜に同じホテルに泊まるのだ。今もどこかで起こっているその現象に不思議な感慨を持つのだ。

また、キャストの配役も見事だ。永瀬正敏やニコレッタ・ブラスキ、ジョー・ストラマーなど個性あふれる俳優が出てくる。しかしそれでもとても収まりがある。それぞれがこの映画の中で決してはみ出る事無く、見事に調和しているのだ。そのあたりもとてもジム・ジャームッシュらしい。

夜の静けさ、そしてどこか不思議な人生の絡み。とてもおもしろい作品であり、何度も繰り返し見たい作品となった。
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