秀ポン

決断の3時10分の秀ポンのレビュー・感想・評価

決断の3時10分(1957年製作の映画)
4.0
この映画をジェームズマンゴールドがリメイクした「3時10分、決断のとき」は人生ベストレベルで好き。
なので、そのリメイク版と比べてどうなんだろうと、両者を比較するような目線で見た。

このオリジナル版は短くまとまってるし、リメイク版と違って陽気なハッピーエンドになっている。
そしてそもそも話の肝になってる部分が違う。それはベンがなぜ心変わりしてダンに協力したのかということ。

リメイク版では、ベンの心変わりの原因はダンの誇りにある。
ベンは、自分を連行するという正義をなすことで、ダンが失ってしまった誇りを回復する美しい瞬間を見たいと思って走った。
一方こっちのベンは、ダンと妻の間の愛情に感化されることで心変わりしていた。

(リメイク版では愛情ではなく誇りの話に変わっているので、ダンを追いかけてくる人間も、愛情の対象である妻から誇りを継承する息子へと変わっている。)

それに伴って、前半にあった、ベンが酒場の女に惚れるくだりの意味も変わってくる。どっちも終盤の展開の前フリとして機能してるんだけど、こっちではベンが愛情を尊ぶ人間であることを示しているのに対して、リメイク版では、ベンが美しいものを尊ぶ人間であることを示している。
主題が変わることで同じエピソードの持つ意味が変わるというのが面白かった。

両者を比較した結果、依然好きなのはリメイク版の方だなとなったんだけど、こっちにはリメイク版にない良さがちゃんとあった。
先に挙げたけど、まず話が短くまとまっている。
例えばリメイク版では描かれていた道中の様子(ベンの脱走とか)はこっちにはない。家を出発したらすぐに駅のある町に着いていた。
部下の描写もあまり無い。個人的にリメイク版の部下側の話にはそこまでハマってないので、それが無くてよりタイトになってるのは良い。
無駄が削ぎ落とされた短編小説みたいで美しいと思う。

それに、陽気なハッピーエンドはやっぱり良い。リメイク版の厳かな終わり方を見ていて、こっちもそんな終わり方をすると思っていたので、不意を突かれてより感動したというのもある。
降り出した雨の中で笑い合う2人。「これが見たかったんだよ〜😭」ってなった。
こっちはこっちでめっちゃいい!!
両方見ることでどっちもより好きになる、良い関係の2作だと思った。

──その他、細かな感想。

・好きな構図
宿で2人きりになるシーン。
窓枠、カーテン、手前のダンの持つ銃身で奥の方で座るベンを囲う構図。
構図的にはベンが追い詰められてるという状況を示してるんだけど、当のベンは余裕そうっていう、ギャップを強調して不穏さを出す演出。

・ベンは新旧どっちも好き。オリジナル版ベンを演じるグレンフォードは、実直そうな見た目はベンっぽくないなと思うものの、口元が常に余裕そうなのが良い。
一方オリジナル版のダンは神経質そうな顔をしていて、流石にクリスチャンベイルの方がカッコよかった。あと、こっちのダンは情けないやつではあるんだけど、可哀想なやつではない。
この新旧でのダンの違いは、ベンがダン個人に感化されるのか(リメイク)、夫婦に感化されるのか(オリジナル)という点で、物語が要請するダンの人物像が違うために生まれていそう。こっちでは妻が助けてくれるけど、リメイクでは1人で頑張らないといけない。
秀ポン

秀ポン