杜口

スパイダーマンの杜口のレビュー・感想・評価

スパイダーマン(2002年製作の映画)
5.0
スタン・リーの訃報を受けて久しぶりに鑑賞。

人生まだ十数年。だから昔から何度も見直す思い出の作品となると子供の頃から見てたものになっちゃうから子供向けの作品ばかりで、今見るとアレなんだけど今作は例外。

もう、ほんとに自分がアメコミ読むようになったきっかけでもあるし、そもそもアメコミで最初に好きになった作品で、当時はスパイダーマンのフィギュアを常に手に持って出かけたぐらい大好きだった。
他にも、エスカレーターとかで親父があの笑い声を響かせ、グリーンゴブリンのモノマネよくしてたとか色々と個人的思い出が詰まりすぎてて、思い出補正のみで5点あげちゃう勢いだけど、冷静に今見ても名作だなあ。

まず、ヒーローの行動原理のとこにちゃんと重き置いて描写してくれるだけでも、充分凄い。マン・オブほにゃららとかみたいにリアルにやりたくてヒーローをヒーローたらしめる部分が曖昧になってない。
スパイダーマンであればあの有名な大いなる力には大いなる責任が伴うみたいな、日本的な敵が出てきたら倒すみたいな対処型とは違ったアメコミ特有の使命感をもったヒーロー像をちゃんと描けてる。

それに、序盤の学校内でのピーターの立ち位置の描写から、メアリージェーンを挟んだハリーとピーターの微妙な関係、そこにハリーと父ノーマンの捻れた親子愛が加わって益々ややこしくなる人間関係とかも綺麗に見せてくれる。

で、ここまでならまだ他のアメコミ作品でもしっかりやってくれてるのもあるのだけど、サム・ライミ監督が凄いのがこれ全てを説明的な台詞無しに映画として見せる上手さ。
それを象徴するのがこの映画を思い出そうとするとどの場面もくっきりどのように見せていたかがしっかり思い出せること。
これ僕だけじゃないと思うんだけど、他の映画だとなんとなく言葉としてストーリーの流れ覚えてたりするのが、これは場面ごとに思い出して、ストーリーがあとからになる。

例えば、壁にぶつかっちゃうとことかはカッコいい音楽が流れて優雅に飛ぶかと思ったら無音になってゴツン!とか、ノーマンがメイおばさんにつまみ食い注意されるとことかは、指を舐めたあとに不敵な笑みとともに、ナイフの擦れるいやあ〜な音が不気味さを醸し出してたり。それに、腕の血が滴り落ちるシーンなどはミッションインポッシブル並みの緊張感。
あげたらきりがないぐらい、こんな感じでどのシーンも演出がほんとにいい!
だから逆に場面と場面の繋がりが薄くて、高校行ってたかと思ったら突如、卒業式の場面になってるとか唐突ではある。
でも、この演出の良さというか映画らしい魅力というのはアメコミ映画の中でダントツであることは間違いない!

それで、この日常的なことに非常に苦悩し、葛藤する親しみの持ちやすいヒーロースパイダーマン。それを何年か経って成長して鑑賞する。そこで、初めてほんとにピーターの苦悩がわかったりするとこもあって、常に僕の成長と連動してスパイダーマンも成長してゆくような感覚。これは何ものにも変えられない。
ほんとこんな名作を子供の時に見ていなかったならば、スタン・リーがいなければ、サム・ライミがいなければ本気で僕の未来は違ったものとなったと思う。それくらいスパイダーマンは僕にとって大切なもの。
だから、これまでもこれからもスパイダーマンは僕の中に生き続けるであろうし、またスタン・リーもまた数々のスーパーヒーローと共に僕を含めた沢山の人の中で生き続けるであろう。

ほんとうに、スタン・リーは自らの言うことを行動によって、ヒーローたちの後ろ姿によって僕たちに見せてくれた方でした。Excelsior!
杜口

杜口