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肉屋のpikaのレビュー・感想・評価

肉屋(1969年製作の映画)
4.0
火サスか!?2時間サスペンスか!?なベタなサスペンスドラマなのにこの面白さ。
サスペンスにしてはミステリアス感はなく超どシンプルなものではあるけれども、メインディッシュはそこじゃなく、サスペンスを軸にした心理ドラマ、いやロマンス映画なのでクライマックスで画面いっぱいに覆われた緊迫感から解き放たれる感情にウルルと胸が熱くなる。

「不貞の女」でもそうだったけどキャラクターの人柄を描くのが上手い。
音楽の存在感が凄いし演技もあるんだろうけど、端的にストーリーを展開させながら同時に細やかにキャラの人物像を散りばめることでドラマに臨場感やらリアリズムを生んでいて、冷静に見ていれば何もかもわかっちゃうようなベタな話ではあるけれど見ている間は全く冷静になどなれないくらいに引き込まれて瞬間瞬間のキャラクターの心理や感情そのものを味わうことが鑑賞の醍醐味になっている職人芸的な魅力が最高。

映画的な装飾というか、展開に無関係なシーンで抑揚つけたりテンポを生んだりしたくなるところをズバズバ切っていく潔さと、展開に必要なところを最小限に見せながらその瞬間だけでない前後の奥行きをも表現させきる脚本力と演出力が凄い。
「不貞の女」では演出力の方ばかりに気を取られたが、今作では台詞の端々が印象的だったり脚本の巧みさも目を引く。

些細な仕草が心理によって見え方が変わってくる、その動きや小物の使い方、見せ方がめちゃくちゃ上手い。
いつの間にやらFINの文字!とばかりに飽きる瞬間なくすいすい見ちゃえる面白さ。
シャブロル想像以上に面白くて興奮気味です。もっと見よ。
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