Ryoma

殺しの烙印のRyomaのレビュー・感想・評価

殺しの烙印(1967年製作の映画)
4.4
1秒毎に、観客の期待や想像の斜め上を颯爽と駆け抜けてゆく、超絶怒涛のモンタージュ。一切の共感や同情を断ち切って、(イマジナリーラインも飛び越えて)、ただただ映画という「完全に造形された長方形の枠組み」の中で、アシンメトリーな幾何学模様が、ドクンドクンと脈を打っている感覚がある。そして終始耳をつんざく程の鋭い音で鳴り響くピストルの銃声は、どちらかといえば「画面の外」から来ているように感じるし、単に登場人物の誰かを撃つ為に「バンッ」と鳴っている訳ではなく、もっとプリミティブな、それこそ「音」という一文字にまで還元されて、音楽を奏でる為に鳴っているような感じさえする。つまり終始一貫してメタの匂い。これはゴダールやゴダール以降の「音映画」に共通する感覚である。…でもそういう風に色々と考えても、結局は主人公が、「炊飯器から揮発する米の香りに恍惚の表情を浮かべるおたふく顔」であるのに象徴されるように、基本的に全編バカすぎるナンセンス狂ユーモアに満ち満ちているから、これはもう両手を上げて愛せざるを得ない映画だし、どう転んでも好きなタイプの映画だ!
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