歌は有名だし映画も教養のために一見してみるかと思ったが、ちょっとした子どもたちの揉め事から町全体を巻き込んだとんでもない物騒な事態に発展する、かなりおもしろいストーリー。退屈を覚悟していたのに杞憂に終わった。
閉じられたコミュニティで古い慣習や価値観に縛られた人々と、そこから脱却を試みる人々の攻防。
私の知る数少ない作品群のなかでも似たようなテーマを扱う作品は現代だろうとどこの国だろうと多い。
いくら時代が進んでもそう簡単に解決できない問題なのだろう。
しかし深刻にならず、全体的にユーモラスな要素も通底している。
1947年の小説原作。
何度か映画化されたうちの1963年版。
設定は当時に合わせ細部は新たに改変されている。
人気があるのも納得。他の版も面白そうだ。
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地方のとある女学校。海辺が近く、山並も美しい。
三年の寺澤新子は、共学の高校から転入してきて間もない。
みなが自転車で通学しているなか一人だけスクーターで登校している。
周りの目を気にしない性格の寺澤を、クラスメイトたちは目障りに感じていた。
寺澤の家は養鶏を営んでいる。
寺澤は小遣い稼ぎに町へ玉子を売りに行き、浪人中の金谷という青年に出会う。
そのとき売り込んでいるところを目撃した生徒の家の女中が誤解し、それが噂として広まった。
寺澤を敵視するクラスメートが、寺澤に偽のラブレターを送り騙そうとした。
寺澤はすぐに気づき、担任の島崎に相談。
島崎は、東京の女子大を出てこれからは女性も活躍する時代だと理想を持っており、寺澤の話もよく聞いてくれる。
すると島崎はクラスで議題にし、犯人をあげ説教をした。
しかし生徒たちは全く理解せずむしろ怒りを募らせ、寺澤と他の生徒たちはますます敵対。
大問題になり職員会議となるが、島崎は孤立。
島崎もまた生意気なインテリ女だと教師たちから鼻つまみになっていたのだった。
校医の沼田だけは擁護してくれた。
生徒一味は、母校への愛だと訴えたり、申し訳ないから今すぐ学校を辞めると脅したり。
さらには地元の有力者である父兄たちを抱き込む。
PTA会長は、芸者を呼んで接待し校長らを結託。
続いて沼田に釘を刺そう電話をかけたが、沼田は権力に屈せず言い返し電話を切った。
分の悪い寺澤と島崎たちは、沼田宅に集まって作戦会議。
笹井というクラスメイトも島崎を慕って味方してくれた。
そして沼田の後輩でもあった金谷とその友人で大学生の冨永も参加。
沼田の家に急患の電話があり、一人向かうと暴漢に襲われ怪我。
寺澤の家で鶏をトラックで輸送する途中にも暴漢。
そしてPTA役員会の日を迎える。
重要証拠だといって恭しく寺澤への偽ラブレターの読み上げから始まり事件の経過が報告された。
「変しい、変しい、」。恋の漢字が間違っていたらしい。
芸者である笹井の姉が出席し、芸者遊びの好きなPTA会長を牽制。
会議に参加した沼田が逐一哲学的な正論をはさみ、議論のヒートアップを抑え込む。
いよいよ多数決投票が行われるが……。
朋友相信じ……PTA会議の行われる部屋に掲げられている。教育勅語の一節。「父母に孝に、兄弟に友に、夫婦相和し、朋友相信じ」