安堵霊タラコフスキー

フルスタリョフ、車を!の安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

フルスタリョフ、車を!(1998年製作の映画)
5.0
この作品を最初に見たときは映画に意味を求めていたため結局何がしたかったのかわからず二時間半が空虚に思えたのだけど、映像を純粋に楽しむようになった今となってはなんとも愚かしい見方だったのかと我ながら呆れてしまう

これはタル・ベーラの作品にも言えることだが、とにかく白黒映像の魔力がただただ凄まじく、加えてこの作品は登場人物も怒り狂ったりおかしな言動をする者ばかりで理解の余地がほとんどないのだけど、理解しようとせずただ身を委ねて感じれば、これほど強烈なものはない

映像が魅力的な作品は、時折もう一度見たくてたまらない禁断症状に襲われがちだが、この作品はまさにそうで劇薬的映像表現は何度見ても刺激的だしその度映像のやばさに戦慄すら覚えてしまう

とにかく映像全振りで麻薬的中毒性のあるこの衝撃の作品は間違いなくアレクセイ・ゲルマンの最高傑作で、カンヌで審査員を務めたスコセッシもその凄さに圧倒されたらしいが、その癖何も賞を与えなかったのには異議を唱えたく、アンゲロプロスやクロードミレールはともかくヴィンターベアやジョン・ブアマンよりこの世紀の傑作に何かしらの賞を与えた方が有意義だったのではないかも小一時間問い詰めたい