工藤蘭丸

揺れる大地の工藤蘭丸のレビュー・感想・評価

揺れる大地(1948年製作の映画)
4.0
1948年に作られたルキノ・ヴィスコンティの2作目。人間が他の人間を搾取する物語という冒頭の字幕を読むと、共産党か何かのプロパガンダ映画として作られたんでしょうかね。劇中のナレーションによる説明もうざかったけど、それは一般大衆にも分かりやすく作る必要があったためなのかなと思いました。

そのようなイデオロギーの問題は別として、それでも戦後まもないイタリアで、このような貧富の差が浮き彫りになっていたことは、ある程度事実だったろうと思うし、彼らの心情を慮って感動させられました。出演者はみんな、地元の住民たちの中から選ばれたということだったけど、とても素人とは思えないような演技で、それはやはりヴィスコンティの演出力の賜物だったのかも知れませんね。

本作も日本では長らく未公開で、初公開されたのは1990年。そのためか日本での知名度は低いようにも思うけど、『自転車泥棒』などと並ぶネオレアリズモの傑作の一つと言っても過言ではないように思いました。

なお、冒頭の字幕の"彼らは反抗や苦しみ 希望を示す言葉を知らない"という部分は意味不明だったので、原語に当たってみたんだけど、どうも「彼らは反抗や苦しみや希望を示すシチリア語以外の言葉は知らない」という意味になりそうで、もしかしたら誤訳に近い日本語字幕だったかも知れませんね。私は若い頃、フェリーニ、ヴィスコンティ、デ・シーカ、ゼフィレッリなどのイタリア映画が好きだったせいで、イタリア語も少しはかじったことがあるんだけど、もうほとんど忘れてしまって、定かではありませんが。