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揺れる大地のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

揺れる大地(1948年製作の映画)
3.9
ルキノ・ヴィスコンティ監督が、ジョヴァンニ・ヴェルガの小説「マラヴォリア家の人々」をもとに、人間が他の人間に搾取される物語をドキュメンタリー・スタイルで描いた、“ネアレアリズモ”の代表的作品の一つ。
当時共産党員(後に脱退)だったヴィスコンティはシチリアの労働者についての3部作の第一弾として作ったが、他の2作は製作されなかった。
全篇がシチリアの漁村アーチ・トレッツァで撮影(オールロケ)され、出演者は全員シチリア島に住む素人で、台詞も全てシチリア方言が使われている。
(標準)イタリア語のナレーションは観客の理解のために後から付け加えたとのこと。
ヴェネチア国際映画祭国際賞受賞。
モノクロ、スタンダード、160分。
原題:(伊) La terra trema: episodio del mare(意味:揺れる大地 海の挿話)(1948、日本公開は1989)

シチリアの小さな漁村。
ヴァラストロ家は代々漁業を営んできた。漁に出たまま帰らない父に代わって一家を支える長男のウントーニ(アントニオ・アルチディアコノ)は、漁師たちが仲買人に魚を買い叩かれていくら働いても生活苦から脱出できない現状を打開しようと、自ら競りに出すことを思いつくが、仲買人と喧嘩を起こして逮捕されてしまう。
仕事の道具にしようとする網元の口利きで釈放されたウントーニは、村の漁民が自分のことに耳を傾けないことを知り、家を抵当に入れて銀行融資をうけ自営で漁を始める。
片口鰯の大漁で塩漬けの樽が 30個も出来て順調なスタートをきるが、海が荒れているのに無理に漁に出たため、嵐にあい、漁船は壊れ、漁具も失ってしまう。
仕事を探すが漁師仲間は誰も雇ってくれず、一家はたちまち困窮。鰯の樽は仲買人に買い叩かれ、家は銀行に差し押さえられてしまう…。

~その他の登場人物~
・恋人ネッダ
・弟コーラ(ジュゼッペ・アルチディアコノ)と密輸商人
・長女のマーラ(ネッルッチャ・ジャムモーナ)と互いに思いを寄せる左官のニコラ(ニコラ・カストリーナ)
・二女ルチア(アニェーゼ・ジャムモーナ)と巡査部長のドン・サルヴァトーレ(ロザリオ・ガルヴァトーニョ)と首飾り
・弟のヴァンニ(アントニーノ・ミカーレ)とアルフィオ(サンヴァトーレ・ヴィカーリ)
・祖父
・母
・少女ローザと壊れた漁船

"キュクロプス魚類販売運送会社"

「虫が石に穴をあけるには時間がかかる」

「ここで生き、ここで死ぬんだ。苦しくても。
どこへいっても水は塩辛いぞ。岩礁の向こうは急流だ」

「嫌われているのね。できたら助けてあげたい。
それは無理だよ。助けることができる人は助けてくれなかった。俺がしたことは自分のためでなく、みんなのためだったが理解されなかった。誰も俺を必要としない。だが、いつか俺が正しかったことが分かるさ」

"搾取されても仕事がなくなるよりましだ"と人々が考える限り、何も変わらないのだろう。
理念が正しくても人がついてこないことが世の中にはたくさんある。人を動かすことは難しい。
ラストの兄弟3人の顔の表情に注目。
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